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過去の放送

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2016年9月25日放送 吉岡たすくさん(第2001回)

会場
テレビ静岡スタジオ(静岡市)
講師
児童文化研究家 吉岡たすく

講師紹介

大阪で小学校の教諭・校長などを40年以上務める。
幼児教育と童話を研究するかたわら
執筆活動と全国各地での講演活動を続けた。
番組開始当初からレギュラー講師を22年間務め、
小学校教師の経験を元に独自の子育て論を展開。
1998年に番組を降板し、2000年5月逝去。

番組で紹介した本

スタジオゲスト 山田パンダ(ミュージシャン・子どもサポーター)

ポイント第2001回「吉岡たすく思い出の名講義 一人で学校に来ない子」

あるおばあちゃんからお便りをもらいました。

「4月に小学校に入った孫は集団登校が終わってからは

一人で学校に行けません。

母親が一緒に行き、授業が終わると車で連れて帰る毎日です。

担任は2か月でなおると言われましたが未だになおりません。

どうしたらいいでしょう」という内容です。

私はそれには答えられません。

なぜなら私はその子を知らないし、

見ず知らずの私が答えるのはとても無責任だと思うのです。 

ただ、私にも似たような経験があります。

その男の子は入学当初から一人では来られませんでした。

いつもお母さんと来る。

授業中もお母さんの方をしょっちゅう振り返っていました。

でも、お母さんが用事で、そっと帰ると、その子もすぐに気が付き、

鞄に荷物をまとめて帰ってしまいます。

私はそのお母さんに、

6年かけて作ったものは6年かけてなおすのですと言いました。

お母さんは「は?」と怪訝そうな顔をしましたが、

私が「その覚悟がないなら、学校をやめたらいい。

学校に来たから偉くなると言うものでもない」と言うと、

「来ます」と答えました。

そして翌日から、そのお母さんの机も教室の一番後ろに用意しました。

ある時彼女が、

「先生、休み時間に子どもたちが授業でわからなかったことを

聞きに来るのですが教えてもいいのでしょうか?」と聞きました。

私は「あなたが聞かれたのですからあなたが決めてください」と答えました。

それからは次々に子どもたちがそのお母さんに質問をしに行きました。

お母さんは体育で破れた子どもたちの服を縫ってやることもありました。

私はお母さんに助手になってもらい、

授業中私の目の届かない生徒を見てもらうことにしました。

そうして1年が経ち、2年生になっても同じ状態が続いていましたが、

10月になったある日、ふと見るとお母さんがいません。

すると男の子もいないのだと思いきや席についています。

私は「お母ちゃんは?」と聞くと「断った」と言います。

私は急に寂しくなりました。他の子どもたちも同じでした。

子どもたちが何とかおばちゃんを呼んできてほしいと言うので、

1週間に1度くらいのペースで来てもらうことになりました。

でも、3年生になるときクラス替えがあります。

3月、ついにお別れの時が来て、

子どもたちが自主的におばちゃんのお別れ会を催しました。

お母さんは最初から最後まで泣いていました。

子どもたちも泣きました。

教育というものは技術や物事を教えるだけでなく、

人と人とが触れ合っていくところにあるのだと思います。

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