2016年11月13日放送 立花龍司さん(第2008回)
- 会場
- 焼津文化会館(焼津市)
- 講師
- コンディショニングコーチ 立花龍司
講師紹介
1964年大阪府生まれ。22歳で指導者への道を選択。
1989年にコンディショニングコーチとして近鉄に入団。
1997年、日本人初のメジャーリーグコーチとしてNYメッツと契約。
筑波大学大学院でスポーツ医学の研究にも携わっていた。
第2008回「目の重要性」
人間は五感のうちで視力によって90%の情報を得て、
自らの行動を決定していると言われます。
ここに一枚の絵がありますが、何に見えますか?
(一見わかりにくい牛の絵)
これを一度牛だと認識してしまえば次にはどう見ても牛にしか見えません。
プロ野球など、球技系の一流選手はこうしたものを即座に理解できる能力が高いのですが、
それは、ピッチャーの投げたボールが
どんな軌跡を描いて飛んでくるのかを過去の経験から予測し、
フィードバックして判断できるからです。
まじめに練習してもなかなか成績が上なかったものの、
動体視力を鍛えることで復活し、
首位打者を獲得した千葉ロッテの福浦和也選手のような例もあります。
眼球には瞳の中に水晶体というレンズがあり、太くしたり細くしたりして、
遠近の焦点を合わせています。それには毛様筋という筋肉が働きます。
筋肉ですから、先天的に強い弱いもあり、年齢とともに衰えて、老眼となります。
野球でもゆるいボールを打てても早いボールが打てないとか、
早い打球の処理がうまくできないなどのケースがありますが、
こういう時には目のことを調べてみる必要があります。
目には柔軟性という側面もあります。
両手で顎を押さえて上下左右を見てみる時、目だけが動きます。
この時には外眼筋という筋肉が使われます。
そして、目を端に寄せる筋力が強いと、
バッターや投手が体を開かずに目だけで目標をとらえることが出来ます。
また、両目のチームワークというのも重要です。
人間は二つの目で情報を得ています。
正面から近づく物体を見るときには自然に寄り目なっています。
右から移動してくるものいるときには最初に右目が動いて次に連動して左目が動きます。
これが出来ないためにスランプになったプロ野球選手がいました。
チームの監督は「たるんでいるから一日中走らせておけ」と言いましたが、
私は目のことを疑い、調べたところ、左目の働きが悪いことがわかりました。
私が1997年にメジャーリーグのニューヨークメッツでコーチをしていたころ、
アメリカではすでにメンタルトレーニングとともに、目のトレーニングが行われていました。
今は心技体に加え、目を訓練することが大切な時代に入ったと言えるでしょう。
動体視力を鍛えると、目にしたものを脳の中に取り入れることが容易になるため、
スポーツだけでなく、様々な学習の面でも有効です。