2010年6月19日放送 大沼えり子さん(第1692回)
- 会場
- さくら台幼稚園(富士市)
- 講師
- 保護司・作家 大沼えり子
講師紹介
1957年宮城県生まれ。
大学卒業後、シンガーソングライターとして
東京、仙台を中心に活躍。
2001年保護司委嘱。
少年院向け院内放送制作の他、
少年の自立を支援するNPO法人代表をつとめる。
番組で紹介した本
「君の笑顔に会いたくて」
著:大沼えり子
発行:KKロングセラーズ(税込1,575円)
第1692回「想いを伝えて」
保護司になって10年になります。
皆さんには、馴染みが薄いかも知れません。
不幸にして犯罪や非行に陥ってしまった子どもの社会復帰や
更生を助ける仕事で、法務大臣から委嘱されています。
初めて少年院を訪れた時の印象は、忘れられません。
更生施設なので当たり前かもしれませんが、暗くて殺風景で、寒々としていました。
そして、鍵をかける音や扉がギィーと開いてガチャンと閉まる鉄の扉の音が耳に残っています。
ほとんどの子どもが、虐待された子や家庭では恵まれなかった子だと聞きました。
しかし、すれ違った少年は、きちんと私に挨拶をしてくれました。
廊下には子どもの作文や詩が展示されており、
そこには面会に来た母に会えた喜びや、罪を詫びる作品がありました。
私も母です。この子達に何が出来るのか考えました。
その頃、私は地域のFM局でDJをしていましたので、声で彼らを励まし、
勇気づけ、私の想いを伝えられないかと少年院に相談しました。
そして、月1回1時間ですが、私の少年院向けのDJはスタートしました。
あるクリスマスの時、私から何かプレゼントできないかと考えました。
少年院から許可をもらって「お母さんの代わりだよ」と、全員の名前を呼んだことがあります。
すると、すぐに手紙が来ました。
リクエスト曲と一緒に「どんな言葉より、名前を呼ばれたことが嬉しい。
孤独感いっぱいで、投げやりな気持ちだったけど、真面目に更生します」とありました。
たった一度、名前を呼んだだけですが、お母さんの声に重ね合わせたのでしょうか。
出院したら、私に会ってお礼を言いたいと結んでありました。