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過去の放送

2018年5月 6日放送 岸田ひろ実さん(第2080回)

会場 清水高部小学校(静岡市)
講師 日本ユニバーサルマナー協会理事 岸田ひろ実
講師紹介

1968年大阪府生まれ。知的障がいのある長男の出産、
夫の突然死を経験した後、自身も大動脈解離で倒れる。
手術で一命を取り留めるが、後遺症で下半身麻痺となる。
高齢者や障がい者への向き合い方の指導や、講演で活躍。

番組で紹介した本 「ママ、死にたいなら死んでもいいよ」 著:岸田ひろ実(致知出版社)

第2080回「あきらめる勇気」

私は車椅子に乗っています。

皆さんは、私を見てどんな感想を持ちましたか?

「大変そう。」「障がい者って可哀想。」といったマイナスのイメージを持つ方も多いと思います。

しかし私は歩けなくなった今が「一番幸せだ。」と思って生きています。

なぜそう思うのか?

私のこれまでの人生には三つの大きな転機がありました。

それぞれの転機には絶望がありました。

しかしその絶望は終わりではありませんでした。

むしろ絶望はスタートでした。

その絶望があったからこそ「今が幸せだ。」と思えるようになりました。

最初の転機は息子の出産でした。

息子にはダウン症があります。重度の知的障がいもあります。

23歳を過ぎた今でも言葉によるコミュニケーションは難しく、

知的レベルも3~4歳くらいだと言われています。

息子が生まれた時、障がいを乗り越えてうまく育てられるか不安でいっぱいでした。

しかしそんな不安は息子が成長するにつれて無くなっていきました。

息子は私たちに大切な事を教えてくれました。

それは「人と違ってもいい。」という考え方です。

「私たちが気付かない幸せは身の回りにいっぱい溢れている。」そんな事を実感させてくれました。

二つ目の転機は夫の突然死でした。

急性の心筋梗塞で39歳の若さで亡くなりました。

「残された家族三人で生きていけるのか?」

「一生懸命頑張って生きてかなければならない。」と不安で一杯でした。

しかし夫の死から「時間は限られている。今を精一杯生きるんだ。」と教えられたように思います。

そして三つ目は私自身の病気、大動脈解離です。

病気は何の前触れもなくある日突然起こりました。

手術を受けて奇跡的に命は取り留めましたが、

後遺症で胸から下に麻痺が残り、車椅子が必要になりました。

それでも私は「子どもたちの前では元気でいなきゃ!」と思い、病室では明るく振舞っていました。

ところが、入院中に外出許可がおりて娘と街に出かけた時の事です。

私たちは道行く人たちに「すみません。」「通してください。」と謝ってばかりいました。

街の中は車椅子にとってバリアだらけです。

病院にいる時、子どもたちに言っていた「お母さんは頑張って生きていく。」という空元気も失せていきました。

そして私は娘にこう言いました。

「私、死にたい!」

すると娘から意外な言葉が返ってきました。

「ママ、死にたいなら死んでもいいよ。」

この言葉がその後の私を大きく変えました。

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