| ところが、心というものは、いくら目を見開いても、どんな高度な科学技術を用いても見えないものなんです。それを、どうにか映像にできないものかと考えてみました。
それは、瞳なんですね。
映画というと、メイクアップ―お化粧という事をお考えになるでしょうが、瞳だけはメイクアップできません。自分の心がメイクアップするものなんです。昨日どんな本を読んだか、どんな音楽を聴いたか、今誰を恋しているか…。そういう心が瞳の輝きをこしらえてくれます。
若い新人の女優さんに僕の映画に出てもらう時、決め手となるのは瞳の輝きです。
そして、もう一つ。年配のベテランの女優さんを決める時は、「シワ」なんです。
シワを消すためにメイクをしたりライトをたいたりするという事もあります。
でもぼくは、シワは人の心を映す素晴らしく美しいものだと信じています。
例えば、両親の顔に刻まれたシワ。これは子育て日記でしょう。
僕たちが生まれてここまで育ってくる間に、心配をしてくださったり、希望を持ってくださったり、一緒に笑ったり泣いたりした心の記憶が残ってシワになった。だから、両親の顔のシワほど美しいものはないんです。
僕の映画に出てもらった吉永小百合さん。
お人形さんみたいにきれいな彼女にもシワがあります。
美しいシワです。映画では分からないとっておきのお話をしましょう。
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