テレビ寺子屋

バイマーヤンジンさん
バイマーヤンジンさんについて

会場/大富中学校(焼津市)

講師/チベット声楽家 バイマーヤンジン

第1515回「夢は学校づくり」

私がチベットから日本に来たのは12年前です。

不勉強で申し訳ないのですが、最初は日本という国をほとんど知りませんでした。「おしん」のイメージしかなく、苦労が多いだろうなあと、想像していました。ところが、日本に来てみると、あまりにも発展していて、豊かな世界でビックリしました。

まず感じたのは、日本の交通の便利さ。私の実家では、一番都会の街までバスで2日もかかります。でも、日本には地下鉄、電車、飛行機、モノレールなどがあって本当に感動しました。スーパーには食べ物がたくさんあり、家の中には家電製品。私は天国に来たみたいと、夫に感謝したものです。
 でも、しばらくすると、日本の良いところを見るたびに親や兄弟のことを思い出して、罪悪感に苛まれるようになりました。私一人だけこんな幸せになっていいのだろうかと悩みました。そして思ったのです。きっと私には何か役割を与えられたのではないかと。

最初は服などの物資をチベットにいる家族に送っていたのですが、そのうち考えました。日本はそれほど大きな国ではなく、資源も豊かではありません。でも経済的には世界でもトップクラス。なぜか。それは日本は明治時代から教育に力を注いできたからだと思ったんです。資源がなくても、知識と技術で世界に誇れる国になったのだと。

そう思うと、私は服を送っている場合ではない、チベットの子供たちを学校に行かせたいと考えました。勉強すれば生きる力が身につきます。それで、人生が変わってくるんです。だから、学校を作ろうと思ったのです。当時は、普通のハンバーガー屋でアルバイトをしていました。自給も安いのですが、それでもがんばってお金を貯めたのです。

3年半かかってお金を貯め、チベットに行きました。学校を建てるには少し足りなかったけれど、みんなで力を合わせて塀を作ったり、土を運んだり、草をむしったりして、一つ目の学校を建てたのです。日本からみれば小さな学校ですが、そこに108人の子供が通ってきました。開校式の日、私は朝からずっと泣いていました。やればできるんだなと、うれしくてたまりませんでした。親だけではなく、自分を育ててくれた故郷に少しは恩返しができたと思います。その後も学校作りを続け、今年9番目の学校の開校式を迎えました。

日本という良い国にめぐり逢えたことで、ここまで目が覚めました。だから、日本には本当に感謝しています。

☆講師紹介
チベット・アムド地方出身。中国国立四川音楽大学卒業後、専任講師を務める傍らコンサートを実施。1994年結婚を機に来日し、各地で音楽活動や講演などを行っている。大阪在住。

◆テレビ静岡12月23日放送◆