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僕だって小さいときから本に恵まれていたというわけではありません。一ヶ月に一冊だけ、「幼年倶楽部」という幼年雑誌が与えられました。昔は配達のお兄さんが自転車で配ってくれたのですが、僕は配達のその日になると家の近くで遊んでいて、お兄さんの自転車が見えたら駆け寄って本を受け取りました。近くの家をお兄さんが周って帰る頃には、もう読み終わっていました。
父親を雇ってくれたおばさんの家には「子供日本文学全集」が本棚に何十冊も並んでいました。その一番最初には「こがね丸」(巌谷小波)というのが載っていて、大変面白かったのですが、次を借りに行ったら、おばさんがもう貸してくれませんでした。
僕には一回り違う兄弟がいて、彼らの本棚には夏目漱石や森鴎外、石川啄木、有島武郎などがありましたから、小学三年生でそれらを全て読みました。そのときから、本の中にある自分と違った人間、自分と違った人生、自分が遭遇もしない事件、そういうものの中に浸れることの喜びを感じるようになりました。僕を育ててくれたのは、まぎれもなく本なんです。
この本の面白さを、どうしてみなさんは自分のお子さんに教えないのか不思議です。ゲームなどはお金を払ってやりますよね。でも、それよりももっと面白いものがここにあるんです。それを伝えないというのは、非常に悲しいことだと思います。
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