| まず今日私が着ている衣装は黒タキシードですが、これが指揮者を語る上で大きなカギを握っています。クラシックの演奏会ともなるとホテルで開催されることも少なくないのですが、廊下を歩いているとウェイターに間違えられることがよくあります。実はこれがミソで、もとは指揮者もウェイターと同じようにタキシードを着て貴族に仕える身分だったのです。ウェイターは料理で、指揮者は音楽でもてなす仲間でした。それが近代になると、オーケストラを専門とする指揮者が登場してきたというわけなのです。
戦後まもなく東京芸術大学に指揮科が設置され私も後年そこに通うことになるのですが、指揮者の誰もが同じ道を歩んでいるわけではありません。私の場合はその中でも特に変わったプロセスを歩んでいて、周りの指揮者に比べると、10年遅れています。小さい頃から音楽が身近にある家庭に育ちましたがしかし幸せな日々は長く続きません。その後紆余曲折の歴史が始まるのですが、詳しい話は次回にしたいと思います。
私が今指揮者をしていて醍醐味に感じることはなんと言っても自分の振る棒によって、プロのオーケストラが動くという劇的な瞬間です。そして自分の仕事を多くの観客に感謝してもらえるということです。そんな指揮者という仕事を誇りに感じています。
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