東日本大震災で被災した市長が小学生に授業 企画した教師の思いは 南海トラフ地震が心配な静岡県で

2022年08月08日(月)

地域

南海トラフ地震で大きな被害が予想される静岡県の小学校が、東日本大震災の被災地の市長から被災体験を聞く授業を行った。企画したのは震災後に被災地に移り住んだことのある教師で、防災教育のスペシャリストをめざしている。市長が語る“あの日”の記憶は児童の心に響いただろうか。

◆釜石市長が児童に伝えた“あの日”
津波によって壊れた建物。道路脇に積み上げられたがれき。これは東日本大震災の2カ月後に撮影された岩手県釜石市の様子だ。

釜石市では最大9.3mの津波が襲い、1000人以上が死亡・行方不明となった。

あれから11年。

釜石市・野田武則市長:
3月11日は釜石では議会中でした。議事堂で議員と意見交換をしている時に地震が起きて、津波がやってきた

7月5日、富士宮市立富丘小学校で行われた6年生の社会科の授業。「災害と政治」がテーマだ。釜石市の野田武則市長が、リモートで当時の様子を語った。

釜石市・野田武則市長:
たくさんの車が津波に流されたり、津波から逃れて走って逃げる多くの姿を見た。その時の気持ちは茫然自失。気を取り直してすぐに対策本部を設置した。市の職員を集めて今後の対策について協議をしたり、岩手県に状況を報告したり、自衛隊に援助をお願いするために電話をしたり

市長は災害対策本部を立ち上げ自衛隊に救助を要請したことや、学校などに避難所を設置したことなどを紹介し、子供たちに災害時に政治が果たす役割を伝えた。

富丘小の児童:
私だったら指示をすることができないと思うので、とてもすごいと思った

別の児童:
いろんな状況を把握しながらすばやい行動ができるところが、普通できることではないので、自分もできるようになれば良いと思った

◆防災教育スペシャリストが企画

授業をおこなったのは6年4組の担任教師の中川優芽さんだ。中川さんは4年前に防災教育のスペシャリストを目指しいったん教職を離れ、大学院で防災教育を研究しながら2年間釜石市に移り住んだ経験を持つ。

6月18日、中川さんは釜石市役所を訪れ野田市長と再会した。

持参した小学6年生の社会科の教科書には、被災した釜石市の状況や復興に向けた取り組みが8ページにわたって掲載されていた。

災害と政治の役割を考える授業をおこなうため、市長にリモートでの参加を依頼した。

富丘小・中川優芽教諭:
(震災を)学んだ上で、自分の命を守るための行動につながっていくような授業にできたら

野田市長は「震災の経験を伝えたい」と依頼を快諾した。 

釜石市・野田武則市長:
災害にあった場合の対処の仕方について、少しでも伝えたいと思っていた。それを発信してくれる方の存在はすごく大事だと思っている

富丘小・中川優芽教諭:
現場の声を聞けるので、子供にも私にも良い授業になると思う

◆“復興かW杯か” 当時の市の課題を児童も議論

7月5日、富士宮市の富丘小学校で行われた授業では復興についても考えた。

話を聞いたのは、釜石市の職員で復興担当だった金野尚史さんだ。

釜石市職員・金野尚史さん:
今まで10年間で178回の復興まちづくり協議会と、9000人を超える市民が参加して議論をしてきた

市民の声を反映しながら復興を進めたと話す金野さん。授業では子供たちに、釜石市民の立場になって考える時間が設けられた。

テーマは「ラグビーW杯開催か、街の復興か」。当時、釜石市では復興が道半ばの中で、2019年のラグビーW杯を開催すべきかどうかで揺れていたそうだ。

富丘小の児童:
みんなが期待しているのは街の復興だから、みんなで街の復興を進めて幸せになったらラグビーW杯をやれば良い

別の児童:
ラグビーW杯をやって観客からお金を集めて復旧に使う

別の児童:
でも開催にお金がかかるから、そのお金で街の復興をした方が早い

真剣に話し合う子供たち。

釜石市役所の金野さんは釜石市がラグビーW杯の開催と復興を両立したことを説明し、市民とともに協議する大切さを伝えた。

釜石市・金野尚史さん:
正解はない中で、住民と市役所と議員といろいろな議論をして答えを導き出すことが一番大切だと思う。みんなで答えを導き出すというプロセスが復興の街づくりには一番大事だと、9年間振り返って思っています

◆巨大地震に備え防災教育は大切

南海トラフの地震で最大約4000棟の建物が全壊すると想定される富士宮市。

富丘小の児童:
もし富士宮市がこうなった(大地震発生の)場合、自分がすぐに動けたり誰かを助けたりすることができればよい

別の児童:
(地震は)いつどこで起きるかわからないので、いろんな訓練をしておきたい

担任の中川さんは、防災教育の大切さを改めて感じていた。

富丘小・中川優芽教諭:
市役所や県の「公助」だけでなく、共に人々で助け合っていく「共助」、自分の命は自分で守り備えも自分たちでしっかりする「自助」を組み合わせていくことが命を守るために大切。これからも富丘小学校で避難訓練や防災教育に尽力していきたい

震災から11年以上が経ち震災を知らない子供たちが増える中、震災体験を学び防災に生かしていくことが求められている。

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