今季の清水エスパルスを巡る担当記者の考察【前編】~監督交代後に見えた光はどこへ~

2022年11月10日(木)

地域芸能・スポーツ

清水エスパルス本社

清水エスパルスは最終節の札幌戦で敗れ、18位のジュビロ磐田とともにJ2降格が決まった。Jリーグ創設から初めてJ1に静岡県勢が不在となる。シーズンを通して見えた清水の戦いぶり、そして課題を担当記者が振り返る。

【後編】~育成型クラブに必要な“哲学”を~

◆クラブ創設30周年

静岡市清水区の三保街道。あちこちにオレンジ色の旗がはためいている。ホームで試合のある週にはさらにその数が増える。三保の真崎には清水エスパルスの本社と練習グラウンド、その手前にはユースの人工芝練習グラウンドもある。

かつてクラブが誕生したころは専用グラウンドがなく、富士川の河川敷や旧清水市内の公的管理のグラウンドを借りて練習を重ねていた。リーグ誕生と同じくクラブ創設から30年、三保グラウンドは「オリジナル10」の一員として歩んできたチームの本拠地として、地域に根付く証として市民に認知されている。

記念すべき30年目、7月には記念試合として、国立競技場で横浜戦が組まれた。かつて、カップ戦や天皇杯などの決勝戦で何度となく戦った「聖地」だ。近年この地を経験した選手は少ない。タイトルに関わることが少なくなったことや、選手の新陳代謝があげられる。

昨シーズン最後の4節を3勝1分けで乗り切った実績から、平岡新体制で臨んだ今シーズン。山室社長と大熊GMが目標に掲げたのは「タイトル」だった。一方で平岡監督は「タイトルを取ると簡単に言えない」と発言した。当時は平岡監督らしい謙虚な姿勢にみえた。

◆4季連続の監督途中交代

シーズンの出足こそまずますのスタートだったものの、勝ち点は思うように伸ばせずチームは低迷した。第14節・名古屋戦からの3連敗で5月末にクラブは平岡監督を解任。昨シーズンの終盤の3連敗を機にロティーナ監督を更迭したのと同じように。

6月にゼ・リカルドを新監督としてブラジルから迎えた。4シーズン連続で監督の途中交代だった。リカルド監督の初采配となった第17節・福岡戦では、大胆な低い位置でのビルドアップから相手を翻弄し勝ち切った。また、北川や乾といった新戦力を迎え、成績は持ち直した。

その後は若干の変動はあったものの、8月末には11位まで順位を押し上げ、チームは上昇に転じたかに見えた。第27節・京都戦は(1-0)で寄り切り、相手の曹監督をして「エスパルスの勝ちにこだわる姿勢をリスペクトしたい」と言わせるほどのゲームだった。サポーターはもっと上位を目指せるチームになったと安堵していたに違いない。

しかし、次の試合の第28節・広島戦が転調のきっかけになった。五分五分の試合展開で拮抗していた矢先、広島の塩谷が乾へのタックルで退場。数的優位に立ち、誰もがこの試合の主導権を握るであろうと思った。しかし、自陣に深く引いた相手の守備ブロックをなかなか崩せない。逆に球際の奪い合いから、一瞬のカウンター攻撃を受けて失点。点が欲しい清水はさらに圧をかけていったが、アディショナルタイムに1点目と同じ川村にハーフライン手前から50mを超えるロングシュートを決められ(0-2)で敗れた。ちなみにこのシュートは今季のJ1・ベストゴールに選ばれている。

8月までの勢いはどこへ行ったのか、9月からは一転して勝ちきれない試合が続いた。

◆アディショナルタイム失点の呪縛

広島戦からの7試合、このうち1試合でも勝ち点3を上げられていたら、降格圏から抜け出せるという甘い期待があったのも事実だ。そのプレッシャーさえなくなれば、「アディショナルタイムの失点」という不吉なトラウマと距離を置けるからだ。

第29節・湘南戦では、白崎とサンタナのコンビネーションで前半12分に先制点を奪い、試合の主導権を握る機会を得た。この試合で湘南から勝ち点3をあげたら、残留を争う相手クラブに差をつけることができる。しかし、後半のシュート数0という記録が物語るように、守備一辺倒の対応だった。サンドバック状態で相手の攻撃を受け、アディショナルタイムにはウェリントンに同点ゴールを奪われ(1-1)の引き分けに。「アディショナルタイムの失点」は今季7試合目になっていた。

「まだ5試合もある」と前を向いたが、現実はそううまくはすすまない。福岡戦、川崎戦ともに(2-3)で敗戦。「苦手意識」、「サンタナへの厳しいマーク」、トラウマ以外の問題も噴出し、“弱い清水”から一向に脱出できない。その間に湘南や福岡が勝ち点を伸ばし降格圏から一歩這い上がっていた。

残り3試合、勝てば磐田のJ2降格が決まる静岡ダービー。清水はコーナーキックからサンタナが押し込みリードする展開となったが、またもアディショナルタイムにゴールをこじ開けられ(1-1)で引き分け、どうしても勝ちきれない。鹿島戦はクリアボールを弾かれまさかの失点で(0-1)の敗戦に。

これまでに光を与えていたリカルド監督の采配はどうだったか。サプライズがピタリとはまる先発起用や、鳥栖戦での北川と乾の同時投入のような「攻撃して点を取る」という明確なメッセージもった交代。そのような「魔法」は感じられなくなっていた。リカルドの秘策はもう尽きていたのか。

残留争いは最終節まで続いた。

(テレビ静岡報道部スポーツ班 外岡哲)

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