高齢化率50%超の町が“子供の施設”で大揺れ 8年かけた学校建設計画が2カ月で白紙に 静岡県

2023年03月10日(金)

地域

西伊豆町長と学校建設計画の住民説明会

8年かけてまとめた学校の統合新設計画が、正式決定から2カ月で一転して白紙になった。町は大揺れだ。静岡県で高齢化率が最も高い西伊豆町での話だ。町にとって“子供は宝”のはずなのに、なぜ子供のための計画が、うまくいかなかったのだろうか。

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◆少子化で進む学校の統合

学校建設計画中止の住民説明会(2023年2月)

2023年2月20日、西伊豆町で学校建設計画を中止する住民説明会が開かれた。

町民:
西伊豆町はこうやって足の引っ張り合いをしているようにしか思えなくて、すごく恥ずかしい

町民:
進め方が強引なまでに進めているから反対しているんですよ

西伊豆町・星野 浄晋 町長:
このまま放っておいていい問題ではないと、町は考えております

西伊豆町は駿河湾に面し人口は約7000人

伊豆半島の西海岸に位置する西伊豆町。夕陽がきれいな海辺の町だ。

人口は約7000人。その51.8%が65歳以上で(令和4年4月1日現在)、高齢化率は8年連続で静岡県のなかで最も高い。

山などに遮られ、町は6つの地区に分かれている。

西伊豆町は中学校1校、小学校3校、こども園2園

子供の数が少なく、1つのクラスを2学年の児童で編成する複式学級もあったことから学校再編が進み、2023年3月現在 町は中学校が1校と小学校が3校になった。

小学校はさらに統合され、2024年春には2校になる。学校から遠い子供はバス通学だ。

伊豆海認定こども園からは海が見える

また2つの認定こども園は、南海トラフ地震による津波の想定浸水域にある。

ひとつの園は、海が見えるほどの近さだ。

◆安全な場所に小中一貫校と認定こども園を

小中一貫校とこども園の建設を予定した先川地区

全ての子供たちを安全な場所で学ばせたい。津波や土砂崩れの心配がない場所はないか。

西伊豆町は、小学校と中学校をひとつに統合した小中一貫校と、認定こども園を、先川地区の民有地 約2万2000平方メートルに集約して、2027年度の開校・開園を目指していた。

内陸で、近くに山も大きな川もない。地震の際には、親がワンストップで子供たちを引き取れる。

星野町長「子供に安全な場所を確保したい」

西伊豆町・星野 浄晋 町長:
一番重要視しないといけないのは、何かあった時に自力で逃げられない子供たちの安全。(子供たちを)私たちはお預かりしている側なので、やはり預かっている時間は、安全は確実に担保してあげたい

◆計画決定から2カ月で白紙撤回

新施設の建設が予定されていた先川地区

文教施設の整備事業は2014年度から始まった。

デリケートな学校統合の問題や地震対策の適地探しなどで時間がかかり、計画が正式に決まったのは2022年11月だ。関連の予算も議会で承認された。

計画中止の記者会見(2023年1月)

しかし、わずか2カ月後の2023年1月、町は計画の中止を発表した。

町議会や保護者からおおむね了承を得られていたものの、費用や農地に建設することなどに一部の住民から同意が得られなかった。

2022年12月から翌年1月にかけ、町の6つの地区で開催した住民懇談会でも反対意見の方が多かった。

◆「校舎で日陰になり農業ができない」

先川地区で農業を営む太田幸夫さん

建設予定地だった先川地区で農業を行っている太田幸夫さん(61)。
太田さんは父親の事業を継ぎ、6年前からハウスでトマトやブドウを栽培している。

当初の新設校の建設予定地は近くにある中学校跡地だったが、地盤の強度や津波のおそれから先川地区に変更された。

太田さん「多くの人の意見を聞いてもらいたかった」

太田さんは住民への説明や同意がないまま計画が進められたとして、町の建設計画の進め方に疑問を持っている。

農業・太田幸夫さん:
(町は)一部の人の意見だけ聞くのではなくて、もっと地区会を開いて多くの人の意見を聞いて、話を進めてもらいたかった。そうすればこんな失敗にはならなかったと思う

校舎が建つとハウスは日陰に

ハウスの隣に4階建ての校舎が建設されれば、日陰になって農業ができないと訴えている。

農業・太田幸夫さん:
なんでこんな農業振興地域につくるのか、僕らはわからなかった。僕らの権利、日照権などもここにつくられたら、ほぼ日は陰ってしまう。だから反対。農業の命は、水と太陽と土。それがダメになる、「太陽はダメです」「水はダメだめです」となったら、もう何十年と父親が耕してきた土地がダメになるという事になってしまうので、大反対しています

◆保護者は憤り 「何年もかけたのに…」

保護者に計画の中止を説明(2023年2月17日)

2月17日 町は保護者を対象にした説明会を開き、計画が白紙になったことを説明した。

8年がかりで決まりかけていた学校とこども園の建設計画。保護者からは疑問と憤りの声が相次いだ。

保護者「(話し合いを)何年やっているんだ」

保護者:
文教施設が必要かという議論は、今まで何年もかけてやってきた。「必要だからつくろう」という話になってここまで来たのに、議会で決まったことに対し、一部の町民の反対でこうなってしまうのは納得がいかない

断念の理由を説明する星野町長

星野町長は、建設予定地が「農業振興のために守る必要がある農地」に指定されていて、土地が購入できないと指定が解除できないと、断念の理由を説明した。

保護者「子供は新しい校舎を夢見ていた」

保護者:
何年(話し合いを)やっているんだという思い。地域住民への説明は、もうちょっと順序立ててやったら違ったのかな

保護者:
親としてはかけてきた時間や労力もあるし、子供が新しい校舎を夢見ていたので残念な思いです。地域住民の説得や初動で、町が一部 段階を踏んでやるところが、うまくいってなかったのかな

町は先川地区を候補地とした計画の町民説明会を2022年8月に開いていたが、建設予定地周辺の住民を対象にした懇談会は、計画が決まった後の2022年12月だった。

◆住民は賛否が分かれる 子供たちのために…

住民に計画の中止を説明(2023年2月20日)

そして冒頭でも紹介したように、2月に町内の各地区で計画中止の説明会が開かれた。賛成と反対のさまざまな意見が飛び交った。

賛成の町民:
子供が少なくなればなるほど、町民全体で子供を守っていかなければならない。(新設施設には)そういう大きな役割があったはずです

反対の町民:
建設構想の時点で町民の声を聞かなかったことに、一番大きな原因がある

町民「町全体で子供のことを考えなければ」

賛成の町民:
(整備事業の話し合いは)何年やっていると思っているんですか。子供のことだから、みんな協力しているんじゃないですか

賛成の町民:
(地域住民に)説明してくれるような議員さんが近くにいるのに、それをしっかり説明しないこと自体がおかしくないですか

星野町長「ワークショップで建設場所の検討を」

計画の大幅な見直しが求められる中、星野町長は今後 さまざまな分野からメンバーを募りワークショップを開く予定だ。
住民代表などのメンバーたちに建設場所を選んでもらい、そこに建てられるか町が判断していくという。

西伊豆町・星野 浄晋 町長:
行政として子供をお預かりする以上、確実に命が守られる環境を整えるのは公の責務だと思いますから、ここはズレなく進めたいと思います

西伊豆町のこども園

住民への説明不足が町への不信感を招いたといえる、今回の学校建設計画。

「町の将来を担う子供たちのために」という思いは、町はもちろん、すべての町民が持っているはずだ。

子供たちのために、良い解決策が見つかることを願いたい。

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