「山で"鮮魚”を売る」スーパーまきうちの挑戦 ~遠州最北の地で~

2023年03月15日(水)

地域

遠州最北の地でスーパーを経営する牧内さん夫婦

「山でまぐろ祭り」。衝撃のフレーズが北遠を駆け抜けたのは2022年3月のことでした。仕掛け人は牧内基さん(43)、真美さん(33)夫婦。遠州最北の町、浜松市天竜区水窪(みさくぼ)でスーパーマーケット「まきうち」を営んでいます。

◆「山でまぐろ祭り」の衝撃

「山でまぐろ祭り」にて行われた解体ショー

まきうちが開催した「山でまぐろ祭り」では、新鮮な刺身盛りや海鮮丼を取りそろえたほか、まぐろの解体ショーも行い、町内外から多くの人が詰めかけました。

充実の鮮魚コーナー

普段のまきうちでも鮮魚の取り扱いは豊富です。お店には、北海道の漁師から取り寄せた産地直送品や、基さんが浜松の市場で厳選した魚たちが並んでいます。山間部のスーパーとは思えない充実度で「まきうち=魚」のイメージは水窪町内で定着しています。

◆北海道から産地直送

店頭に並ぶ北海道直送のマス

市場を介さず、北海道から直送で魚を仕入れる独自のルートは、ひょんなことから開拓されました。2022年の夏、北海道で競走馬を育成している真美さんの兄に夫婦で会いに行ったのがきっかけです。

競争馬の育成は大変で、かまれたり蹴られたりとケガをすることが多いといいます。その様子を聞いた基さんと真美さんは「どんな仕事をしているのか心配。一度職場を見てみたい」と、北海道行きを決意。そのときに出会った兄の友人が、日高地方でも特に質の高い昆布がとれる、「特上浜」と呼ばれる場所で昆布漁を行う漁師でした。

特上浜でとれた日高昆布

「特上浜の昆布をまきうちで売ってください」。その人の一言から始まった、北海道から水窪への産地直送。日高昆布は1年を通して届き、季節ごとに旬の魚も送られてきます。漁師の目利きによる間違いのない魚がまきうちの強みです。取材の当日も、あでやかなマスが鮮魚コーナーで輝いていました。

◆基さんの目利きも光る

この日は御前崎産のマグロが入荷

魚の仕入れルートは北海道だけではありません。基さん自身も浜松の市場で魚を仕入れています。

まきうち・牧内基さん:
マグロの場合、サンプルとして置かれた尻尾の断面を見たり触ったりすることで色目、身質、脂などを確認します

身がもっちりした触感のものを選ぶのが基さんのこだわりです。

鮮魚コーナーの中でもマグロは上段の目立つ場所に鎮座

舞坂や御前崎など静岡県内で揚がったマグロも取り扱いますが、基さんのイチオシは冷凍マグロ。なかでもインドマグロは脂感が良くオススメだそうです。

まきうち・牧内基さん:
冷凍の技術が上がり、世界中から集まる多彩な種類のマグロを仕入れられます

お店での冷凍保存も気を抜きません。通常のスーパーではマグロを身だけにして冷凍するところ、まきうちでは皮付きのまま冷凍し、味と鮮度を保っています。保存する冷凍庫の中はマイナス60℃の極寒です。

◆真美さんの“総菜改革”

とりむね唐揚げは拳を思わせるビックサイズ

魚へのこだわりで、長らく水窪町民の胃袋をつかんできたまきうちですが、近年は総菜部門にも力を入れています。

旗振り役は真美さん。かつて、まきうちの総菜は真美さん本人もあまり食べたくなかったといいます。「自分が食べたくないものを、お客さんも食べたいと思うはずがない」と改革に乗り出しました。

最初の一手は、粉末だしからの脱却。店でだしをとるようにしました。始める前は手間がかかるという懸念もありましたが、今のまきうちでは当たり前になっています。

種類豊富で色鮮やかな総菜コーナー

品ぞろえも大きく変更しました。当初は少ない品数でそれぞれを大量に作っていましたが、多種多様な商品を少しずつ用意する方式に転換。バリエーションが豊富になったことで、陳列に華々しさが生まれました。「ついでにちょっと買っていこう」という需要も増加し、改革の結果は上々だということです。

これからも水窪と共に歩む

水窪のメインストリートにある「まきうち」

まきうちの進化は留まるところを知りません。2023年1月には社長が基さんから真美さんへ交代。水窪出身の基さんではなく、町外で育った真美さんの新しい視点で店づくりを進めていきます。

基さんは水窪の人口減少が進むなかで、一時は外に目を向けたこともあるそうです。その時水窪でのスーパー存続を強く望んだのは真美さんでした。「何も無いから良いんだよ」。水窪の当たり前の中に特別なものを見つけ、大切に思う真美さん。その一言にハッとさせられ、スーパーを続けることを決めました。

基さん、真美さんの陽気な一面も魅力

きょうも水窪では、まきうちの新鮮な魚や豊富な総菜が町民の生活を彩っています。「山でまぐろ祭り」にはじまる奇想天外な仕掛け。まきうちの進化から目が離せません。

文/山崎洸一(テレビ静岡 Wasabeeより)

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