能登半島地震で栗農家を断念も移住先から仲間を支援…和栗がつないだ“奇跡の縁” 静岡

2024年09月14日(土)

地域暮らし・生活

能登半島地震で全壊した松尾さんの作業場

能登半島地震で被災し、栗農家を断念せざるをえなかった男性が移住先の静岡県から能登の栗農家を守る方法を見つけた。参加する和栗ブランド化のプロジェクトが能登の栗を買い取ることになったのだ。プロジェクト参加のきかっけは和栗がつないだ“奇跡の縁”だ。

【動画】大好きな和栗で能登を守れ! 地震で栗農家断念の男性が移住先から仲間を支援

地震で自宅兼作業場が全壊

栗農家当時の松尾さん(2021年・輪島市)

15年前から石川県輪島市で栗園を営んできた松尾和広さん(50)は、糖度の高い焼き栗が地元でも評判の味だった。

しかし、2024年元日に能登半島を襲ったマグニチュード7.6の地震が松尾さんの人生を一変させた。

全壊した自宅兼作業場

地震発生時に自宅の玄関にいた松尾和広さんは「ガシャンガシャンと音が聞こえてくるんですよ。裏の物置小屋に仕事道具などを入れてある食器棚があったのですが、それが倒れてきているような音が」と恐怖の瞬間を振り返る。

幸いにして家族は全員無事だったが、商売道具である農機具などをしまってあった自宅 兼 作業場は全壊した。

農機具などを買いそろえるのに2000万円、作業場を作り直すのに1億円以上かかると聞いて、松尾さんは「投資としては厳しいな。無理だな、終わったな」と思ったという。

栗農家を断念し移住を決意

農園の前で家族と

栗園自体は栽培を続けられる状態だったが、作業場の復旧が困難である以上、大好きな栗農家としての再出発はあきらめざるを得ず、一家での移住を決意した。

松尾和広さん:
家族全員が安心して暮らせる環境を探す方が大事、自分の栗とかにはこだわらずに。これは仕方ないなと思った

親交ある菓子メーカーから誘い

プロジェクトに参加する松尾さん(2024年7月)

こうした中、松尾さんのもとに舞い込んだ1件の依頼。

以前から親交のあった浜松市の菓子メーカー「春華堂」が遠州地域で採れる和栗のブランド化に取り組むプロジェクトを立ち上げることになり、松尾さんにも参加を呼び掛けた。

松尾さんはプロジェクトに参加することを決意し、浜松を移住先に選んだ。

松尾和広さん:
栗の仕事が引き続きできるということで、まだまだ能登では仕事を失った人がいっぱいいるので(恵まれた環境で)すごく感謝しています

栗栽培を指導する松尾さん

松尾さんは現在、栗の栽培に適した候補地の選定を担当しているほか、これまでに培った技術や経験を参加している企業や農家に伝える役割を担っている。

プロジェクトを立ち上げた春華堂の飯島美奈 部長も「新しく今までなかった技術や知見が加わるので、より一層 掛川を中心とした遠州地域、県全体で栗の産地化に向かって大きく動き出すのでは」と期待を寄せる。

プロジェクトが能登栗を買い取りへ

能登栗

また、松尾さんの栗園を含む輪島で採れた栗は新たな加工品の開発や復興支援の一環として、このプロジェクトが買い取ってくれることになった。

2024年4月、松尾さんは剪定作業のため再び能登の地へ向かった。

本来なら1月にする仕事を、地震の影響で3カ月遅れでやらなければならない。

剪定をする松尾さん(2024年4月・輪島市)

松尾和広さん:
失われた3カ月とでも言うんですかね。やると決めたら少しでもおいしくて、糖度が高くて品質のいいものを収穫して売りたい。それを考えると(栗園を)放っておくことはできないので

栗園は2025年から知人の農家に譲ることが決まっているが、今も浜松と輪島を行き来し栗への愛情を注ぐ。

移住先から能登栗を守る

松尾和広さん

松尾和広さん:
僕は栗しかやってきてないし、自分がいま能登のためにできることは栗しかない。この和栗プロジェクトに出会えたことで能登の栗農家の栗を買い続けることができる。それをずっと続けられたら、小さなことではあるものの、能登の農家にとってはありがたいことだし、栽培を続けられるので、能登栗を結果的に守ることができるので、すごくありがたい

震災で自宅や仕事を失いながらも、大好きな和栗がつないでくれた縁を活かして遠く離れた静岡から被災地を支えようと歩み始めた松尾さん。

その思いはきっと能登の地へと届くはずだ。

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