静岡県伊東市で老朽化した保育園の移転・建て替えを巡り波紋が広がっている。市は津波が懸念される区域に120人規模の「こども園」を新たに造る計画を示しているが、保護者などが猛反発。

計画の見直しを求める声もあがる中、今後の議論の行方が注目されている。

【動画】津波想定浸水区域にこども園建設はあり？なし？　保護者は「わざわざ海の目の前に建てるのはどうなのか」と猛反発　市は理解得たい考え

老朽化した保育園を移転統合

玄関の床はボロボロになり、壁には大きなヒビも…。

静岡県伊東市の宇佐美保育園は1976年に建てられ、すでに49年が経過。老朽化で耐震基準を満たしていない。

こうした状況に保護者も不安を口にする。

宇佐美保育園父母の会・深澤樹菜 会長：
耐震性がないということで親としては心配でしかない。見てもわかる通りでヒビが入ってる場所もあるので、保育士たちが子どもたちを守ろうと思っても守れないのではないかと思う

保護者からの耐震性を危惧する声を受け、市が進めているのが保育園の移転・統合だ。

宇佐美保育園を園児の数が減っている宇佐美幼稚園と統合した上で、定員120人の認定こども園を造ろうと計画している。

予定地は海から150m

しかし、その移転予定地を巡り、いま波紋が広がっている。

伊東市教育委員会 幼児教育課・鈴木慎一 課長：
広さは約6200平方メートルです。（Q.海から近いが？）だいたい150mから200mぐらい

予定地は元テニス場の広大な土地だが、海岸からは約150mしか離れておらず海抜は6mほど。

相模トラフ巨大地震が来れば最大約7ｍの高さまで津波が押し寄せる想定で、保護者や関係者からは反対の声があがっている。

宇佐美保育園父母の会・深澤樹菜 会長：
なぜ海に近づいて行かなければいけないのか？もう少し海から離す方法がないかを考えて欲しい

伊東市保育園父母の会連合会・稲葉舞子 会長：
東日本大震災でも大きな津波の被害を受けたが、わざわざこども園を海の目の前に建てるのはどうなのか

また、保護者などは市が土地のかさ上げや建物の高層化をしたとしても「乳児を抱えての避難は難しい」と訴えている。

計画を懸念する声は多く父母の会による43人への保護者アンケートでは約7割が計画への反対や懸念を表明した。

宇佐美保育園父母の会・深澤樹菜 会長：
保育士が子供たちを抱えて上に逃げなければいけない状況に置くのは違う。逃げなくても良い場所を前提にこども園を建てるべきではないかと思う

市側はベターと理解求めるも

一方、伊東市は保護者への理解を求めている。
　
他の移転候補地は敷地の広さが十分でなかったり、用地の取得に時間がかかったりするため、この場所での建設が”ベター”と主張。

伊東市教育委員会幼児教育課・鈴木慎一 課長：
この基準水位以上のところに避難できる施設が、現在考えられる一番安全な施設として必要な条件だと考えており、逆を言えばこの条件を満たした中で一刻も早くここに建設をすることがベターであると考えている

また、小野達也 市長も丁寧な説明をして理解を求めたい考えを示した。

伊東市・小野達也 市長：
2階に逃げるとかそういうことではなく、2階もしくは3階に園舎があるという考えのもと、どうすればそれができるかと準備を始めたところだが、まずは場所が心配という声に対して説明をしていく段階になってきた

こうした中、3月12日に伊東市立幼稚園PTA連絡会のメンバーが伊東市役所を訪れ、小野市長に4000筆を超える反対署名を手渡した。

伊東市立幼稚園PTA連絡会・杉山弘樹 会長：
宇佐美臨海テニス場跡地へ認定こども園を建設する計画に反対し、見直しを求めるために署名活動を実施し、父兄や家族を中心に多くの人から賛同を得た

これに対して小野市長は「重く受け止めている」と答える一方で、「園舎や園庭は2階以上に設けるなど子供たちが被害にあわないよう計画を進めている」と改めて理解を求めた。

耐震性のない現在の保育園からの移転を急ぐのか？時間がかかっても津波の心配のない場所を探すのか？

多くの人が納得する丁寧かつ迅速な議論が求められている。