リニア問題の核心「大井川の水」 消えない“河原砂漠”の記憶

2020年02月12日(水)

地域ビジネス(政治・経済)

未だ決着が見えないリニアの工事を巡る騒動、今回はもう少し深く読み解いていきたいと思います。
議論の核心は「大井川の水」が減ることへの不安ですが、地元には不安を持たざるを得ない背景や歴史がありました。

1月31日、知事のもとを訪れた掛川市の住民の代表。
大井川の水が減ることへの不安を知事に訴えました。
 
住民代表「水については、非常に敏感でありますんで」
別の代表「水の確保をお願いしたいと強く思います」
 
住民が確保を懇願する大井川の水。
流域の人たちが水に対して敏感になるのには、わけがありました。
 
大井川の中流に位置する川根本町。
「大井川を再生する会」の久野孝史(くの・たかし)会長です。

久野さんが案内してくれたのは、塩郷(しおごう)えん堤と呼ばれる場所です。
 
久野会長「下をずーっと通ってます。導水管が」

Qここでどれくらい通ってる?
久野会長「これ(導水管)で75トンくらいですね」 

Q大井川の水でいうと、どれくらいの割合になるんですか?
久野会長「あそこ(本流)が3.5トンですから、約20倍、あれの20倍」
 
なぜ、本流に流れる水の20倍を超える水が、地中に敷かれた導水管を流れているのか?
久野さんには、地域が国策に翻弄されてきたという思いがあります。

大井川を再生する会・久野孝史会長
「だいぶ減っていますね。ぼくらの(子供の)時は、この川幅があって、そこをいかに渡れるかっていう話だったんですけど」

塩郷えん堤から導水管に引き込まれた水は、川口発電所へと送られ、発電のほか各地域に農業用水や工業用水として送られます。

急傾斜で水力発電に適している大井川には、明治から平成まで30以上のダムやえん堤がつくられました。
しかし、開発されればされるほど、効率良く発電するために川の水は導水管に流されるように。

また、上流部の田代ダムからは、最大で毎秒およそ5トンの水が東京電力の水力発電のため早川に流れ込み、そのまま富士川に流れていました。

そして、ついには…
 
1988年のリポート
「江戸時代、越すに越されぬ大井川とうたわれるほど水量が豊富でしたが、現在は水も流れておらず歩いて渡れるくらいです」

“河原砂漠”とも呼ばれる、下流に水が流れない状況に…

また、上流もえん堤で堰き止められ、土砂が堆積し生態系は破壊されました。

1988年の住民決起大会
「大井川の自然を取り戻そう! 大井川の自然を取り戻そう」

我慢の限界を超えた住民たちは、約30年前「水返せ運動」と呼ばれる大規模な運動を展開し、塩郷えん堤で最大5tの水の返還を勝ち取りました。

久野さんは、水力発電が戦前・戦後の経済を支え、地元にも道や鉄道が整備されるなど恩恵があった面は評価しています。
しかし、国や電力会社に翻弄された過去から、リニアの議論は慎重に進めてほしいと考えています。
 
大井川を再生する会・久野孝史会長
「国の国策に翻弄されてたっていうのは、まあ、分かってますけども、やはりいい環境にして、河原も河原なりの水の流れがあればいいとは思いますけどね」
 
地元の経済界も議論の行方を注視しています。
東遠工業用水道企業団の大石慎弥さんです。

案内してもらったのは、大井川から15キロほど離れた海に近い地区。ですが…
 
Qこちらにも水を引っ張ってきている?
大石さん「こちらの方で2社、自動車産業とペットボトル製造と、そういったところに工業用水を使用させて頂いております」

周辺には他に大きな川がないため、農業や工業用水として、離れた地域にも大井川の水が供給されています。
安価な水が供給されるようになり、地元の経済を潤しています。

東遠工業用水道企業団・大石慎弥さん
「法人税の税収ですとか、企業さんの誘致によって雇用の増大が生まれますし」

Qこちら(スズキ相良工場)もかなりの方が?
大石さん「(雇用は)数千人規模です」

東遠工業用水は、現在、スズキの相良工場や東洋製缶、ブリジストンなど、あわせて16社が利用しています。
そして、この16社が使う水の総量は最大で毎秒0.104トン。
その約20倍の毎秒2トンが、リニアのトンネル工事では減る可能性があると試算されています。

東遠工業用水道企業団・大石慎弥さん
「水の0.104トンという現状の水を、しっかりと安定的に供給する義務がありますので、当企業団とすれば、水を安定的に供給するためには(リニアの工事をしても)水をしっかりと確保して頂きたいという風には考えています」

流域の住民に共通する水への強い思い。
たった2トン減水の試算で静岡県はリニアの工事を止めるのかと、簡単には言い切れない深い歴史と背景が大井川流域にはありました。

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