“ 逃げる1歩目 ”は… 津波避難「すごろく」に込めた思い 静岡

2020年03月18日(水)

暮らし・生活

東日本大震災から9年。
巨大な津波は街を飲み込み、私たちに大きな教訓を与えました。

南海トラフ地震でも避けては通れない津波から、どう子供たちを守ればいいのか。
静岡市の男性が、避難を疑似体験できる「すごろく」を作り、子供たちに命を守る術を伝えています。

2月、浜松市浜北区で開かれた防災講座。

小学生たちが体験したのは「津波避難すごろく」。

巨大地震が発生し、学校の校庭に避難した自分が津波から命を守るため、どこにどのように逃げるかを考えます。

男子児童 「ラジオは今の様子とか分かるから、ラジオは取っといて…」

別の男子児童 「先生がいい指示くれるかもしれないから、まず先生行って。冬だから、毛布とか…」

食料や毛布などのマスに行けば物資を入手できます。

1マス1分で、避難に使える時間は「最大30分」。

30分以内に、高い場所を目指して避難します。

弁護士・永野海さん 「これ(サイコロ)で、津波の高さを後で決めます。命のサイコロです。冗談みたいに思うかもしれないけど、静岡に来る津波もサイコロと一緒です。1メートルが来るかもしれないし、12メートルが来るかもしれないし、それは実は起こってみないとわからない」

このすごろくを作ったのは、静岡市清水区の弁護士、永野海(ながの・かい)さん。

県弁護士会の災害対策委員を務め、震災以降、被災地で生活再建のための法律支援をしてきました。

宮城県石巻市の大川小学校。

校庭に留まり続けた74人が津波の犠牲になりました。

あの日、娘を失った父親の言葉が頭から離れませんでした。

大川小で娘を失った鈴木典行さんです。

鈴木典行さん 「(土を)掘ってて何人かの足が出てきて、みんなあげたはずなんですけど、自分の心の中でもう一人ここにいるはずだと。作業再開して1分くらいたったら、やっぱり足が出てきたんですね。学校の上靴をはいてました。そこのかかとに真衣って書いてあったんですね。うちの娘の名前です。何とも言いようなかったです。声もでないです」

永野さん 「本当に…衝撃的で。ちょうど同じ年頃の子供を、僕は持っていましたから」

袋井市に江戸時代から伝わる「中新田命山」。

息子の朔太郎(さくたろう)君と津波について考えることも増えました。

永野さん 「登ってみると結構高いね」
息子・朔太郎くん 「下から見るよりも高い感じがする」
永野さん 「今でも十分、場合によっては命を守ってくれるかもしれない」

いざという時に、我が子は津波から逃げることができるのか。

震災の教訓を無駄にしないため、2人で東北の被災地も訪ねました。

息子・朔太郎くん 「津波が校舎を覆うほどの高さもあるし、どこに避難するとかを考えておかないとだめだと分かりました」

そして、全ての子供たちにも、避難を考えるきっかけを与えるためにはどうしたらいいのか。

たどり着いたのが、避難の疑似体験をさせること。

子供たちの興味をひこうと、あえて「すごろく」と名付けました。

永野さん 「今回僕がすごろくを作ったのも、仮の町の中だとしても一度避難を経験する。自分の避難が正しかったのか、あるいはもっとほかの選択肢を取るべきだったのかということを一度経験できるわけです」

サイコロで津波の高さを決めます。
永野さん 「いっせーのーせ!」
児童たち「わー!」
永野さん 「10メーター」

与えられた30分を最大限使って避難を完了させ、通ったルートを説明する子供たち。

永野さんは質問を投げかけます。

永野さん 「スタートから20分目の場所、人形がどこいったか見てください。20マス目。あなたがいた高さは何メーターかわかった?」

児童 「はい、1メーター」
永野さん 「10メートルの津波でそれでも命を守った人、手挙げて!」

誰も手を挙げず…

永野さん 「このすごろくを、東日本大震災で本当に大事な人を亡くした人にやってもらったことがある。何一つとらずに、裏山の11メートルのところに逃げました、最短距離で。結局、津波の怖さを知ってるんだよね。津波はそんな、いろんなものとって逃げて待てるほど、怖くない存在じゃないんだ。本当に怖くて一秒でも早く高いところに行きたいって思ったんだ。たくさんの命を奪った津波、怖い、その一心だと思うんだよね。みんなも東日本の人がそういう選択をしたことは必ず覚えておいてください」

すごろくを終えた子供たちは「とにかく高いところに、いち早く逃げる」という一番大切なことに気づかされます。

女子児童 「実際に(津波を)体験した人は、何も持たないで裏山に行ったこと。自分の命を優先することが、すごく勉強になりました」

男子児童 「家族に伝えて、高いところに時間がかからないように逃げたいと思います」

弁護士・永野海さん 「自分から1歩目で逃げることが、どれだけ難しいのかっていうのは本当に教えられました。それを実際に逃げるという経験を、すごろくの上でもすることで、逃げる1歩目、子どもたちが逃げると周りの大人も逃げるし、近所の人も逃げるし、何十人、何百人の人の命を救うきっかけになるんです」

静岡県の宿命ともいえる南海トラフ巨大地震。

一人でも多くの命が助かったとき、すごろくに込められた「東日本大震災の教訓」が活かされたといえそうです。

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