土葬に制約 イスラム教徒・ムスリムのお墓を考える 静岡

2020年09月14日(月)

地域

国内に約20万人が暮らしているとされる、イスラム教徒「ムスリム」。
外国人労働者が増えて、日本で家庭を築き、日本で生まれ育つ「第2世代のムスリム」も増えています。

しかしいま、ある理由から安心して日本で暮らせないと感じているそうです。
それは、お墓の問題です。

藤枝市に住むスリランカ人のモハメドさん一家です。

16年前に父親の仕事で日本に移り住んだモハメドさん。

妻のアイシャさんに、リーナちゃんとライアンくん。

一家4人、毎日にぎやかに暮らしています。

しかし、日本での生活に大きな不安があります。

モハメド・ヌーマンさん 「私たちの家族には墓がない。日本では火葬が主流なんですが、私たちは土葬をしないといけないので土葬できる土地が見つからない」

イスラム教では火葬ではなく、土葬で遺体を埋葬します。

しかし、土葬ができる専用墓地は国内に10カ所程度しかなく、遺体の行き場がありません。

自分たちの将来、そして日本で生まれ、日本で育った子供たちはどうなるのか。

モハメド・ヌーマンさん 「外国人だけでなく、ムスリムは日本人にもいるので、亡くなって土葬できる場所がないと困る」

ムスリムの墓地とはどんなものなのか?

甲府盆地を見下ろす山の中腹に立つ曹洞宗の寺「文殊院(もんじゅいん)」。

敷地の一角に、国内でも数少ないムスリムの専用墓地があります。

文殊院・古屋和彦住職 「こちらがイスラム教徒の方々の墓地です」

杉村祐太朗記者 「日本のお墓とはずいぶん雰囲気が異なりますね」

文殊院・古屋和彦住職 「イスラム教徒は墓地を華美に飾り付けをしないと聞いています」

杉村祐太朗記者 「墓地の区切りはどうなっていますか?」

文殊院・古屋和彦住職 「四角い石が四隅に置いてあって、その下に土葬したという目印になっています」

先代の住職がムスリムと交流が深く、50年ほど前に、寺の土地の一部をムスリムの専用墓地にしました。

当初は、年間数人程度が購入していましたが、1990年代半ばから、国内で暮らすムスリムの増加に伴い、年間10人以上に。

これ以上増えると収容できなくなると感じ、2002年には寺の檀家が眠る墓の一部もムスリムの墓地として使うようになりました。

こうして、現在では約150人のムスリムが一般の墓のとなりで眠っています。

文殊院・古屋和彦住職 「十分に埋葬先が確保できないので、致し方なくこの場所に集まってくる。これが日本の現状というのはあると思います」

墓地が増えないのには理由があります。

「静岡ムスリム協会」の事務局長をつとめるアサディみわさん。

協会は、県内にムスリムの専用墓地を新たに作ろうとして、去年11月、宗教法人格を取得しました。

静岡ムスリム協会・アサディみわ事務局長 「特に今年は、新型コロナウイルスで多くの人が一気に亡くなる可能性がある。そういった方を受け入れられる墓地を整えることは、コミュニティとしての大きな責任と感じている。ムスリムが亡くなったとき、体をきれいに水で洗う。そのあとに真っ白い布で体を覆って、それから埋葬する」

遺体は布で包んだ後、そのまま土葬します。

これまでのムスリム墓地は100万円近くかかるため、高額で多くのムスリムにとって手が出しづらいと話すアサディさん。

手に入りやすい墓地を作るべく候補地を探していますが、新設には高いハードルがあると言います。

協会は静岡市内の山中に候補地を見つけましたが、市から難色を示されました。

テレビ静岡の取材に対し、市が公表した条例の事務取扱要領には、墓地の設置場所について次のように書かれています。

「申請地の周囲約100メートル以内に水道の水源又は飲用井戸等がない場所とする。ただし、墳墓内に焼骨のみを埋蔵することが明らかな墓地についてはこの限りでない」(事務取扱要領より)

市によりますと、火葬された遺骨の埋葬は近くに水源があっても設置が許される場合がありますが、土葬の場合には、衛生面などの懸念により条件をより厳しくしているということです。

静岡ムスリム協会・アサディみわ事務局長 「飲料水や飲料用水のもとになるような水源地に近い所はいけない。実際どのくらい水源地から離れることで安全が確保されるのかという質問をしたが、明確な答えがもらえなかった」

また他県では、ムスリムの団体が新設墓地のための土地を確保した後に、地元住民が反対運動を行い計画が頓挫したケースもあります。

静岡ムスリム協会・アサディみわ事務局長 「安心して、経済的にも、静岡で暮らしながら亡くなる事もできる人生が、ここで成り立つような環境を整えていきたい。受け入れてもらえる日が来たらうれしい」

国の外国人労働者の受け入れ拡大に伴い、日本で「生」を受け、「育ち」、「働く」外国人も今後ますます増えていくことが予想されます。

そんな彼らが、人生を送ったこの日本の地で眠ることのできる自由を望んでいます。

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