“ハコモノ行政”の失敗例？厳しい船出の静岡市歴史博物館　全体の4割がレプリカ　展示品の充実度に課題を抱える中ようやく　課された使命を果たすために

オープンから2年あまりが経った静岡市の歴史博物館。ただ、来館者数は目標を大きく下回る厳しい船出となっている。背景にあるのは展示品の“充実度”だ。

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総事業費およそ60億円。

2023年1月にオープンした静岡市歴史博物館。

NHK大河ドラマの波及効果にも期待し、当初掲げた来館目標は年間50万人。

しかし、実際に訪れたのは28万人（2023年度）と目標を4割以上も下回った。

要因の1つとして考えられているのが展示品の“充実度”だ。

目玉であるはずの2点の甲冑を始め全体の実に4割がレプリカという状況で、市には厳しい意見も多数寄せられている。

静岡市・難波喬司 市長：
過大な設定をしてやるっていうのは、それを続けていくというのは適切ではないと思いますので、適切な入館目標を決めて、そして、どういう展示をしていくのかっていう地に足の着いた運営をしていく必要があると思っています

こうした中、1月に公開されたのが徳川家康の遺品の1つ「越前康継」。

正真正銘の“本物”で、家康が駿府城に戻った大御所時代に将軍家お抱えの刀鍛冶、初代・越前康継が作ったものと考えられている。

さらに、2月には徳川幕府を支えた御三卿の1つ、田安徳川家の末裔から貴重な品々が託されたため、展示に向けた準備が進められていた。

中には朝廷が田安徳川家の初代・宗武に役職を与えたことを示す約300年前の書状もある。

静岡市歴史博物館・宮崎泰宏 学芸員：
将軍の後継ぎを出す家柄として家格を高めていくということが必要になりますので、その始まりですね。最も古いものになりますので、こうやって田安家の格が上がっていくということを示すものでございます

この田安徳川家は多くの優秀な人材を輩出していて、中にはここ静岡にゆかりのある人も…。

齊藤力公 記者：
静岡浅間神社のすぐ隣にあるこちらの公園には徳川慶喜の後を継いだ徳川家達が幼少期に生活していた屋敷があったということです

明治維新のあと、15代将軍・徳川慶喜から徳川宗家を引き継いだ家達。

当時、わずか6歳でしたが静岡藩の初代・知藩事となり、廃藩置県によって東京に移り住むまでの3年間、この地で生活していたという。

2月11日からは研究のため非公開となった資料除き、田安徳川家に残る数々の資料の展示が始まった。

来館者：
田安家があるのは知っていたけど、なかなか静岡と結びつかなくて。静岡藩ができたときに（家達が）来たから、こういう縁で資料が来たんだなってわかってよかったと思います

来館者：
初めて聞いたのでとても驚いたというのと、静岡の歴史的な部分で徳川家と家康公だけじゃないつながりがずっとあることがうれしいなと思います

静岡市歴史博物館・宮崎泰宏 学芸員：
博物館ができて貴重な資料も迎えることができた。この状態がようやく静岡市でできたことをうれしく思っています

大石学 館長は地域の歴史を掘り起こし、その価値を多くの人と共有していくことが博物館に課された使命であり、存在意義だと話す。

市歴史博物館・大石学 館長：
静岡市の歴史文化というものを全国、さらには世界に知らせて、そして、たくさんの人に来てもらって、この地の良さを知ってもらう。これが基本的なことだと思いますね。市民の方々に理解してもらって、たくさんの共有点を持って何度でも館へ足を運んでもらう、そんな館になっていくことが目的です

苦境が続いている静岡市歴史博物館。

多額の税金が投じられている施設なだけに貴重な品々を研究し、展示していくことでなくてはならない存在へと成長できるのか…その歩みが注目されている。