吉田さんとハウスのつぼみ、カーネーション
夏の猛暑にゲリラ雷雨、さらに冬の厳しい寒波と異常気象が“異常”でなくなりつつある昨今。農作物への打撃が深刻化する中、静岡県河津町と東伊豆町では特産品に影響が及んでいて生産者が頭を悩ませている。
【動画】“異常気象”が異常でなくなりつつある昨今…母の日に欠かせないカーネーションに異変 昨夏の猛暑で苗が“萎縮” 4月に入っても目立つつぼみ飯田進さん
色とりどりの花が並ぶ「かわづカーネーション見本園」。
品種の研究成果など町の特産をPRする場として毎年2月1日から開かれている。
しかし、2025年は開始から2カ月以上経っているにも関わらずつぼみが目立つ。
かわづカーネーション見本園・飯田進 栽培管理者:
昨年の夏の異常な暑さで植えた苗が萎縮しちゃって。だから成長が本当に遅れちゃって。ですからいつもですと12月・1月に開花する花がまだ全然。成長も丈も短くて。本当にこんなこと初めてですね
24年と今年の開花状況の比較
ハウスでは274種・1万2500株ものカーネーションが栽培されているが、2024年の同じ時期と比べると違いは一目瞭然。
かわづカーネーション見本園・飯田進 栽培管理者:
(開園期間は)5月11日の母の日までですね。だからちょうど、もう残り1カ月しかなくなっちゃって
カーネーションの出荷作業(JAふじ伊豆河津桜支店)
こうした中、最盛期を迎えているのがカーネーションの出荷だ。
河津町と東伊豆町をあわせた生産量は県内全体の約9割。
多い時には1日に4万本から5万本を首都圏に出荷する。
ただ…
生産者・山田巧さん:
生育が良くなかったというか、2024年の夏の猛暑。何の作物もそうなんだけど、その影響がいまだに出ている。夏場、根がやられた。植物の根が。(Q.花の収量はどう?)どうなのかな…例年より少ない
吉田重好さん
カーネーションを育てて半世紀余りという吉田重好さん。一見すると例年通りに育った花々に見えるが…。
生産者・吉田重好さん:
こっち側は1本も枯れてないでしょ。で、この3通りがねやっぱり品種が(暑さに)弱い品種で、土の中に病気があるとこういう形で枯れちゃうの。同じことをやっていて、これだけ(生育が)違うんだよね。弱い品種や土の中に病気が少しでも残っていると、こういう形になっちゃうの。3月のお彼岸頃にはこんなじゃなかったんだよ。それがやっぱり暖かくなってくるとバタバタって枯れちゃったね、この1カ月間くらいで
吉田さんのハウス内の花
そこに来て昨今の原油高や物価高が追い打ちをかけている。
生産者・吉田重好さん:
俺(カーネーション栽培を)始めた時にはリッター25円だったの。ドラム缶1本5000円だったんだよね、200リッター。もう2025年は118円。同じA重油が。だから4倍だよ。4倍強。それに準じて油製品のビニールや資材が本当に上がっている。肥料から農薬からこういう資材が。だから本当に大変。そういうのをみんなに知ってもらいたいなと思ってさ
約1100坪の敷地で計16棟のハウスを管理している吉田さん。
夜間は暖房装置を使ってハウス内を暖めているが、一晩に使用する燃料は500リットルから600リットルと経営を圧迫する要因になっているだけに、1本でも多くのカーネーションを出荷したいのが本音だ。
生産者・吉田重好さん:
枯れていると収量がもちろん減るし、マイナスになっちゃう。だから品種選び。これからなお重要になると思う。夏の暑さに強いものとか、夏から秋にかけて病気にならないものとか。今までにそういうの(異常気象)はそんなになかったんだけど、これからなお暑くなってくると思うので、その辺がやはり一番、これから1つの課題かなと思って
藤井俊行 研究員
農業技術の研究や開発に取り組む県の伊豆農業研究センターによると、花も動物と同じで厳しい環境下に置かれると病気に対する抵抗力が弱まり枯れやすいという。
県伊豆農業研究センター・藤井俊行 研究員:
カーネーションに関して現在取り組もうとしているところは栽培技術の開発になります。夏の暑さを遮る遮光技術や夏を避けた新たな作型の開発といった、栽培技術の開発に取り組もうとしています
カーネーション
母の日には欠かすことのできないカーネーション。
“異常気象”が異常でなくなりつつある中、即効性のある解決策はまだ見つかっておらず生産者にとっては苦しい我慢の時が続きそうだ。