見学者と羽衣団地内部
静岡市に残る”48型”と呼ばれる団地は、日本最古の今でも入居者を受け入れている唯一の公営住宅だ。研究者や建築を学ぶ学生による視察や見学が絶えず、当時の生活などを知る歴史的価値もあるという。昭和レトロの雰囲気を漂せる日本最古の公営住宅の魅力はどこにあるのだろうか。
【動画】「オシャレな部分がたくさん」日本最古で唯一の現役公営住宅“羽衣団地” レトロモダンな昭和の雰囲気に当時の生活に思いを馳せるインタビューに答える参加者
コンクリート造りの団地の前に集まる人たち。
静岡市のまちづくり公社が主催した市営住宅の見学会の参加者だ。
見学会と言っても、ここに住むためではない。
参加者:
東京から来ました。団地が好きなので見学会を昨年末に知ってずっと来たいなと思ったので
参加者:
静岡ですけど、たまたま近くに住んでいる知人がいてこの団地を何回か通って気になっていたので、ぜひ見学したいなと思って参加した
JR静岡駅から南西に約1.5km。
安倍川に近い葵区駒形通4丁目にある羽衣団地。
横一列に並ぶ鉄筋コンクリート造り・4階建ての4棟のうち中央の2棟が羽衣団地と呼ばれ、今から77年前、終戦間もない1948年に設計・着工されたことから”48型”と呼ばれている。
日本で最も古い公営の住宅で現在の入居率は約60%。一部を除いて現役だ。
静岡市住宅政策課・小澤映里 係長:
全国各地から大学の研究者や建築を学ぶ学生が調査に来ていて、希少な建物を市民や団地が好きな全国の人に見てもらいたくて見学会を開いている
台所と部屋つなぐ配膳口
永井学 解説委員:
見学用の部屋に入ってきました。部屋は建設された当時のままの姿です。こちらは台所と部屋をつなぐ配膳口ですが、現在入居している方も、このままの形で使用しているということです
担当者:
「ご飯できたよ」と言うとちょうど丼がでてくる
参加者:
考えた人って海外からですか?
担当者:
当時の設計者たちが良いところを研究して「こういう方が良いよね」としたと思う
羽衣団地の間取り図
羽衣団地は1棟24戸で、部屋は6畳間と8畳間、それに台所の2K。
当初の1カ月の家賃は1,200円、現在の貨幣価値にして4万円ほどで、当時としては珍しいガス設備と水洗トイレが設置されていた。
風呂場は地下に木製の浴槽が設置され、2日に1回、4世帯が交代で使用していたが、現在は1979年の改修により各部屋に設置されている。
担当者:
一番風呂はいいんですよ。4番目なんかえらいこっちゃ。とても入れなかった
羽衣団地の空撮
この羽衣団地は、戦後に不足していた住宅問題の改善や生活水準の向上という目的のほかに、もう1つ大きな役割を担っていた。
静岡市住宅政策課・小澤映里 係長:
この羽衣団地は防火帯としての役割がある
1940年代の団地周辺は木造の住宅がほとんどで、建設前には静岡大火や空襲など大きな火災に見舞われた。
このためコンクリート造りの4階建ての団地6棟が横に一列、さながら壁のように建設され、市街地から離れた安倍川方面で火災が発生した場合、西風で市街地に火が広がらないよう東西を断ち切る防火帯の役目を果たしていた。
インタビューに答える参加者
参加者:
けっこうそのまま残っていたのでびっくりした、古いまま残っていたので。(Q.住みたいと思います?)思います!
参加者:
今ではないような工夫もあるし、台所の扉とか面白いなと思う
参加者:
今見るとおしゃれな部分がたくさんあってびっくりした
静岡市住宅政策課・小澤映里 係長:
今後も皆さんに広く知ってもらうため、見学部屋として活用していきたいと思っている。まだ市営住宅としての役割もあるので維持管理しながら大切に使い続けていきたい
羽衣団地外観
昭和の生活を今に残す日本最古の市営住宅・羽衣団地には一般の見学者だけでなく、建築関係者や建築を学ぶ学生も多く訪れる。
昭和の生活を今に伝える貴重な資料を後世に伝え、これからの時代に活用されていくことが期待されている。