17～23億円を要する博物館は必要？　関連予算案は何とか可決も市議会は賛否が真っ二つに…物価高騰で建設費がさらに増える懸念も

静岡県富士宮市が建設を目指している郷土史博物館。市議会で建設計画の策定に関わる予算が認められたものの、いまだ賛否が分かれる状況となっています。

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2025年3月11日に開かれた富士宮市議会の特別委員会。

新年度の予算案を審議する中で多くの時間が割かれたのが市の郷土史博物館に関連する予算についてです。

予算審査特別委員会・近藤千鶴 委員：
博物館に予算を割くことで、他の重要なプロジェクトや市民サービスが停滞することがないか、より多くの市民に恩恵をもたらす別の使い方があると思う

土器類はもとより、豊臣秀吉や今川義元など戦国武将の貴重な古文書、市の成り立ちや文化を伝える資料など約1万点が収蔵されている埋蔵文化財センターの浸水リスクが高まったことや老朽化が目立ち始めたことから、5年前に建設計画が持ち上がった郷土史博物館。

富士宮市教育委員会 文化課・中野香織 課長：
市民に郷土のことを知ってもらうために博物館が必要という思いがあった。富士宮の歴史をみなさんに知ってもらいたい。富士宮の昔の人も頑張ってくれた歴史があるので、誇りを持って富士宮を好きになってもらいたい

ただ、整備に要すると見込まれるのは約17億円から23億円。

そこに来て昨今の物価高により更なる建設費の増加が見込まれるほか、候補地として郊外の3カ所が示されているものの須藤秀忠 市長が突如として富士宮駅近くでの建設に言及したことも相まって、賛否が分かれる状況に…。

予算審査特別委員会・渡辺佳正 委員：
郷土史博物館の必要性について市民の意見を広く聞いたのか？

予算審査特別委員会・佐野和彦 委員：
次の計画に移るなんておかしい。基本構想の練り直しをやるべき

このため、基本構想を具体的な計画へとするための予算案は可決こそしたものの予算審査特別委員会では削除を求める修正動議が出され、賛成票と反対票が同数で割れるなど異例の展開となりました。

こうした中、4月には博物館の建設に慎重な姿勢の有志が計画の是非を問う住民投票を求めるため署名活動を実施。

実際に署名をした子育て世代の市民は…

署名した市民：
歴史を守ることも大切だが、“箱”を作るのではなく今あるところを使った上で、子供たちにもっと楽しく元気に過ごせるような施設など子供のために税金を回してほしくて署名した

博物館の管理や運営などについて研究している静岡大学情報学部の村野正景 准教授は、これからの博物館の在り方について社会課題の解決に向けた場であるべきと提唱します。

静岡大学情報学部・村野正景 准教授：
高齢者や認知症など記憶の部分で身体的・精神的にだんだん問題が生じてきている人たちに対して、例えばソーシャルワーカーや医療関係者と組むことで博物館が持っている資産を使いながら医療的な問題に対して解決に結びつける

その上で、博物館の役割について議論を尽くすことが重要だと話します。

静岡大学情報学部・村野正景 准教授：
こういう課題は博物館と結びつけたら解決できるといった博物館の多様な可能性、あるいは役割をみんなで見つけていく。市民の困ったところを博物館が解決する。そのための社会インフラとして博物館を位置付けられるかどうかに懸かっている

実際に建設されるとなれば多額の税金が投じられるだけに幅広く意見を聞いた上での合意形成が求められています。