自治体と企業の熱中症対策
2025年6月1日から企業の熱中症対策が義務化された。静岡県内では2024年、熱中症で救急搬送された人の数が2500人あまりと3年連続で増加。まさに社会的課題となっている。こうした背景から自治体と民間企業が協力し対策を進めるなど取り組みの輪は拡がりを見せている。
【動画】「熱中症対策」で自治体と企業がタッグ…県内の搬送者・3年連続増加 報告体制の整備や重症化防ぐ手順の策定など義務化子供を連れた女性
弦間彩華アナウンサー:(5月20日)
雲ひとつない空から日差しがじりじりと照りつけて、とても暑いです。まもなく午前10時30分を迎える静岡市内、気温は30℃、真夏日となっています
5月20日、静岡市で31.8℃を記録するなどすでに真夏日を観測した県内。
“季節外れ”とはいえないほど近年の暑さは常態化して来ているようだ。
子連れ女性:
暑いです。もう真夏がきたのかという感じ
熱中症対策グッズコーナー
年々厳しさを増す温暖化に静岡市内のドラッグストアには冷却スプレーやネッククーラーなど、早くも熱中症対策グッズのコーナーが設置されていた。
杏林堂薬局 地域医療連携推進室・長谷川剛広さん:
以前に比べても、熱中症対策の関連商品の棚を見る客が増えている状況
2024年は、全国で過去最多の10万人近くが救急搬送された熱中症。
熱中症を減らすために開かれた会議
暑さへの対策は社会的な課題となる中、県内でも自治体や企業が協力して取り組みを始めている。
2025年3月、静岡市役所で開かれた会議。
参加したのは市やサッカーJ1・清水エスパルスに製薬会社、ドラッグストアなど様々な企業や団体。
地域での熱中症を減らすためにそれぞれができることを考えようと集まった。
静岡市環境局GX推進課・平岡大知さん:
施設・店舗の利用者への呼びかけなど細かなところに対する呼びかけは、市ではなかなか難しいので民間や団体の力を借りていきたい
自治体の力だけでは限度があると頼ったのは民間の力。
クーリングシェルター
特に2025年、力を入れているのが極端な暑さをしのげる施設「クーリングシェルター」の充実だ。
福島流星 記者:
こちら静岡市内の商業施設では夏のあいだ誰でも利用することができるクーリングシェルターを設置しています。熱中症患者をゼロにするために静岡市と企業が行う取り組みの1つです
クーリングシェルターの利用者
静岡市清水区の商業施設・イオン清水店では、食品販売コーナーからほど近い場所など店内3か所にクーリングシェルターのスペースを確保。
商品を購入しなくても利用することができる。
静岡市では現在、公共施設に加え180もの民間施設をクーリングシェルターとして指定、今後、その数をさらに増やしたい考えだ。
利用者:
ありがたい。15分くらい(自宅から)歩いてくるので、きょうも暑かったから疲れちゃった
杏林堂での熱中症対策セミナー
さらにクーリングシェルターを設置するとともに、こんな取り組みを行う店舗も…。
杏林堂薬局 地域医療連携推進室・長谷川剛広さん:
(熱中症の疑いがある人に)ペットボトルを開けて渡すという人がいるが、自分で開けられるかどうかが意識障害の有無を判断する材料の1つなので、ここで開けてあげる優しさはかえって命とり
静岡県浜松市に本社を置き、県内を中心にドラッグストアを展開する杏林堂の店内で行われていたのは熱中症対策セミナーだ。
大塚製薬・仲濱陽介さん
この日は、製薬会社・大塚製薬の社員を講師に招き脱水症状の見分け方などについてのレクチャーが行われていた。
大塚製薬・仲濱陽介さん:
爪を出して下さい。反対の指で、左手の親指をグーっと押してみて、押したときに爪が白く変わるが 離したときにすぐにピンク色に戻れば脱水状態ではない。ただ、押したあとに白い状態が続いてしまう人は脱水状態になっているかもしれない
セミナーでは、シャーベット状のドリンク・アイススラリーを運動や作業を始める前に飲むことであらかじめ体の内部の温度を下げる方法などが紹介され、参加した人たちは熱心にメモをとるなどして講師の説明に耳を傾けていた。
熱中症セミナーの参加者
参加者:
熱中症みたいな感じになったら、日陰に積極的に行って休んでみようと思う
参加者:
これから暑い時期になるので子供と一緒に意識しながら過ごせたらと思っているので(セミナーを)受けてよかったなと思う
大塚製薬・飯田繭子さん
大塚製薬・飯田繭子さん:
熱中症を社会事化する。それによって環境を変えて熱中症の搬送者数を減らしていく。それが一番の近道だと考えているので、研究開発で得た知見を健康に関する情報として伝えたいという思いとその情報を基に人々の健康に貢献したい
熱中症による健康被害を減らすために自治体はもちろん、民間企業を含めた社会全体で対策を進めることが求められている。