年下からの“タメ口”に激高 凄惨かつ残虐のリンチの上に監禁…そして湖に投げ捨て殺害 22歳男の弁護側は「殺意のグラデーションの中では最も淡い」と懲役8年を主張 被害者の母親は「殺してやりたい」と吐露

開廷前の法廷内(6月9日)

袋井市に住む男子高校生に暴行を加えてケガをさせた上、車のトランク中に監禁し、浜名湖に投げ捨て溺死させた罪に問われている22歳の男の裁判員裁判で、検察側は懲役18年を求刑した。一方で、弁護側は懲役8年が妥当と主張している。

初対面で年下から“タメ口”で話しかけられたことに怒り募らせ…男子高校生をレンチで殴りコンクリに打ち付ける さらに湖に投げ捨て殺害 22歳無職男が起訴内容認める 弁護側「積極的な殺意認められない」と主張

傷害・監禁・殺人の罪で起訴されているのは浜松市に住む無職の男(22)で、2024年2月、フィリピン国籍の男(当時18)と共謀し袋井市に住む男子高校生(当時18)に暴行を加えてケガをさせた上、車のトランク内に監禁し、浜名湖に投げ捨て溺死させた罪に問われている。

6月9日の公判では検察側の論告、弁護側の弁論を前に死亡した高校生の母親による意見陳述が行われた。

この中で母親は我が子の遺体と対面した時のことについて「頭が真っ白になり途方に暮れた。目の前のことが現実のものと信じられなかった」と振り返りつつ、「明るくクラスメートとも衝突したことのなかった息子がなぜ殺されなければいけなかったのか私には理解できない」と苦しい胸の内を吐露。

そして「私たち家族はこの先、心から笑えることはない。消えない傷が残った。犯人を殺してやりたい。犯人の親にも息子を失うことがどんな気持ちなのか思い知らせたい。息子が戻ってこない以上、唯一の望みは被告を死刑にして欲しい」と訴えた。

これまでの裁判で、事件に至ったきっかけは知人宅で男子高校生を含む8人で酒を飲んでいた際、男子高校生が年上である共犯の男に敬語を使わずに話しかけ、注意されたにも関わらず、その後も“タメ口”で話し続けたことから共犯の男が怒りを増幅させたことが発端だったと明らかにされていて、その後、男子高校生がその場にいた男の知人と口論になり、止めに入った女性を倒したことから共犯の男が男子高校生に暴行を加え、男も加勢するに至ったという。

こうした中、検察側は論告の中で男子高校生の額や目が大きく腫れ、顔は血だらけになるなど多数回にわたる激しい暴行で、途中から昏睡に近い状態で抵抗もガードもできなくなった状態でも手を緩めず、2人がかりで一方的に暴行を執拗に加えるなど「態様は極めて悪質」と主張。

また、男が共犯の男の怒りに同調し、制裁を加えるため苛烈な暴行に及んだ末に自分たちの犯行を隠すため監禁したほか、証拠隠滅として口封じのため殺害に至るなど、「あまりに短絡的で命の尊厳を著しく軽んじた無慈悲かつ身勝手な動機で酌量すべき点は一切ない」と断罪した。

その上で、「男子高校生の両親は我が子が痛めつけられ、苦しめられ、命を奪われ、これ以上ない悲しみを強いられるなど遺族の厳しい処罰感情も十分に考慮する必要がある。一連の犯罪を起こさないための行動を取れるタイミングは何度もあり、自らの行為がどのような結果につながるのかわかっていた。各犯行に及んだ意思決定は強い非難に値する。反省の弁を述べてはいるが、内省の深まりは不十分」として懲役18年を求刑。

これに対し、弁護側は傷害について「『友人を失いたくない』という思いから暴行を加え始めた。自ら進んで暴行を初めておらず、被害者のケガのほとんどは共犯の男による暴行が直接的な原因」と主張し、監禁についても「知らない間に男子高校生をトランクに入れることが決まっていた。トランクに押し込んでもおらず、頼まれて運転しただけで、手伝う形で関わっていただけ」と反論した。

さらに殺害に関しても「最後の一線を越えないよう止めていた。すべて受け身の姿勢だった。湖に落とすことに対しても『それはダメ』と発言している」と述べ、「主導的ではない上に重要な役割も果たしていない。強固で積極的な殺意はなく、計画的な犯行でもない。殺意のグラデーションの中では最も淡い」として懲役8年が妥当と訴え、弁論を締めくくっている。

最後に来司直美 裁判長から「何か言いたいことがあったら」と問われ、証言台の前に立った男は、タガログ語で「ひどいことをしてしまいごめんなさいと謝罪したい。被害者や家族に申し訳ないと思っている。取り返しのつかないことをしてしまった」と口にした。

判決は6月13日午後3時から静岡地裁浜松支部で言い渡される。

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