ディープな“夜の街”へと誘うガイドツアーでニーズの掘り起こしへ　目指すはインバウンド客“通過地点”からの脱却

外国人観光客が駅には降り立つものの滞在時間が短い静岡県三島市。そこでクラフトビールやスナックでカラオケなどディープな街の魅力をアピールする取り組みが始まっている。

【動画】インバウンド客の“通過地点”から脱却目指し…ディープな“夜の街”へと誘うガイドツアーでニーズの掘り起こしへ

2025年6月13日 県が立ち上げたインバウンドを呼び込むための検討会 初会合。

県東部地域局・笹野努 伊豆観光局長：
インバウンド、すなわち訪日外国人観光客は、延べ宿泊数で見るとコロナ前の2019年と比べて2024年は全国で4割増しになっている。一方で本県は8割にとどまっている

県によると、国内の宿泊客のうち外国人が占める割合は全国が25.2％に対して静岡県は8.6％。新幹線が停車する三島市でも訪れる外国人のうち市内に宿泊する人はわずか1割程度といわれている。

実際にJR三島駅近くにいた外国人観光客に目的地を聞いてみると…

スペインからの観光客：
河口湖に向かい、富士山に行って湖を眺める

ポルトガルからの観光客：
三島はただ通過するだけ。京都から新幹線で来て、ここから富士山に向かうところ

三島は目的地ではなく、通過地点や乗り換え地点でしかないという現実が浮かび上がる。

県東部地域局・笹野努 伊豆観光局長：
現状がどうなっているのか、なぜインバウンド客が乗り換えだけで終わってしまうのか、その根本的な課題をまずはしっかり明らかにする必要がある

街の人たちもただ手をこまねいている訳ではない。

伊豆ファン倶楽部運営事務局
谷壮史さん：
学生の視点でもっと三島という街・ことを外国人に発信したいという部分をリストアップする

こうした中、学生たちを巻き込んで現在準備が進められているのが三島に宿泊する外国人観光客をディープな“夜の街”へと誘うガイドツアーだ。

伊豆ファン倶楽部運営事務局
谷壮史さん：
せっかくここ（三島）にいるインバウンド客を街中に出すことにより飲食店もハッピーになるのではないか

三島駅に隣接し宿泊客の3割以上を外国人観光客が占めるという富士山三島東急ホテルで実際に話を聞いてみても…

富士山三島東急ホテル・西島孝紀さん：
ご飯を食べた後に飲みに行きたいという宿泊客も本当に多い

2024年11月。

この日行われたモニターツアーに参加したのはアメリカ人の4人組。

まず案内したのは三島駅から徒歩2分の場所にある飲食店。

季節のフレンチと共に地元のフルーツなどを使ったクラフトビールやスパークリングワインが楽しめる。

店員：
ピーマン・ポテト（を使っていて）けっこう香りが強くて苦みも強い。1杯目だと…強いかもしれない。それでもよければ

アメリカ人モニター：
試してみる（笑）

次の店に行く途中も街のPRに余念がない。

学生：
early summer we can see fireflies（初夏にはホタルが見られる）

アメリカ人モニター：
fireflies yes yes（ホタル！）

続いて地元住民しか知らないような路地に入っていく。

ここでは居酒屋文化のひとつ「チンチロ」を体験。

サイコロを振って出た目の数で勝敗などを競うパーティーゲームの1種だ。

そして、日本独自の文化といわれるスナックでは常連客と共にカラオケで大いに盛り上がった。

参加したアメリカ人：
スナックは入りにくいという部分があると思うが、実はそうでもないと改めて今日思った。ぜひ海外から来てる人たちにも体験してもらいたい

今後ツアーを本格化させるために窓口となるホテルとの連携やガイド役の人材確保や育成が課題となっているが、学生たち自身も会社を立ち上げるなど、地域活性化に向けて動き出している。

Clarity Labo社長・杉本光太さん：
地元に海外の人が来てくれているので、もっと地元の良さを知ってもらいたいという“地元愛”と学生がなかなか学校で学んだ英語をアウトプットする場がないと思っているので、海外の人たちの文化も知りながら交流というのはすごく魅力がある

伊豆ファン倶楽部運営事務局
谷壮史さん：
英語のメニュー表や多言語化という部分に追いついている店舗はすごく少ないと思う。いずれ三島が目的地になるという未来を見据えた時に、いま滞在している外国人をしっかり少しずつでも案内することで飲食店も地域の人たちもそれに向かう準備になると思う

外国人観光客に目を向け滞在してもらえる街になるために…

更なる三島の魅力の再発見とニーズの掘り起こしが必要なようだ。