なぜ？広域ごみ処理施設建設が“事実上”白紙に　1市3町の合意から南伊豆町が離脱表明　物価高騰でメリット薄れる

伊豆半島の南部で進んでいたごみ処理の広域化計画。だが、ここに来て南伊豆町が離脱した。一体なにがあったのか。

【動画】なぜ？広域ゴミ処理施設建設が“事実上”白紙に…1市3町の合意から南伊豆町が離脱表明　背景には不信感も

静岡県南伊豆町・岡部克仁 町長：
議員からも財政的に負担がかからない方が将来的にかからない方がいいのではないかという答えをいただいた中で、その後、町の幹部で協議をして、最終的には離脱をさせてもらうことを決めたということを先ほど報告させてもらった

6月2日、南伊豆町の岡部町長が言及したのは下田市・西伊豆町・松崎町と共に進めてきた広域ごみ処理施設の建設計画だ。

それぞれの市と町にある施設の老朽化が著しいことを理由に4年前から議論が始まった新設計画。

ところが、2029年の完成を予定していたものの人件費や資材の高騰により、事業費は当初の見通しから50億円以上も増えて305億円に上振れ。

また、結果的には受け入れられなかったが、人口や排出されるごみの量を基に算出した各自治体の負担額について下田市の松木市長が財政の厳しさから見直しを求めるなど暗雲が立ち込めていた。

こうした中、南伊豆町が下したのは分担金を拠出するよりも今まで通り民間の業者にごみ処理を委託する方が今後40年で20億円の負担軽減につながるという判断だ。

静岡県南伊豆町・岡部克仁 町長：
やはり広域でやるメリットは財政負担の軽減が一番大きなメリットだが、それで今まで（1市3町で）進めてきたが、この物資高騰や人件費高騰により50億円も事業費が上がったので風向きが変わった

南伊豆町民：
いろいろ考えた末の決断だと思うので

南伊豆町民：
自分の面倒は自分で見るような自立した自治体であってほしい

南伊豆町の脱退によって事実上白紙となった広域ごみ処理施設。

これに戸惑いを隠せないのが松崎町の深澤町長だ。

静岡県松崎町・深澤準弥 町長：
1つの自治体で焼却施設を持つということは、ほぼ100％これからの世の中も含めて無理だと思う

松崎町内にあるごみ処理施設のクリーンピア松崎は建設から26年が経過。施設は30年に一度のペースで大規模改修が必要といわれるうえに、年間の維持管理費は6700万円と財政を圧迫している現状がある。

静岡県松崎町・深澤準弥 町長：
みんな（1市3町）で進めるものだと思っていたところで今回（南伊豆町が）そういう表明をしたのはいろんな思いもあると思いつつ、非常に残念だという思いは変わらず、今も（南伊豆町が）戻ってこないかなぐらいの気持ちでいる

一方、松崎町と同じように築30年近いごみ処理施設を抱える西伊豆町。

星野町長は複数の自治体で運営する広域ごみ処理施設の必要性を強調しつつ、南伊豆町の決断には理解を示している。

静岡県西伊豆町・星野浄晋 町長：
この計画が本当に成就するかもわからない不信感漂うところでは、やはり町民の負託に応えるためにはゴミ処理行政はしっかりしないといけないので、舵を切らざるを得ないところまで追い込まれての判断だったと思う

だからこそ、疑問視しているのは不協和音を生んだ下田市の対応だ。

静岡県西伊豆町・星野浄晋 町長：
覚書には負担割合はどうするということも明確に書いてあるはず。これを変えようということを言ってくるとことは、一番始めの話をひっくり返そうというという話と一緒ですから、本来こんなことは絶対あってはならないことを平気でやってくるところがあるというのは、不信感を抱くそのものだと思う

こうした声について下田市の松木正一郎 市長は…

静岡県下田市・松木正一郎 市長：
（事業費が）50億円増えるというのは物凄い事だったわけです。下田市は当然のことながらその中で最も負担が多い。比率的に。その負担が多い下田市が財政的には弱い。恥ずかしながら。4人で漕いでいるボートの漕ぎ手が力尽きてしまいそうだということで、1回決まったことに対して(再考を)お願いをした

その上で南伊豆町には翻意を呼びかける。

静岡県下田市・松木正一郎 市長：
基本的には1市3町は足しても（人口が）4万人いない。全部合わせても長泉町にも満たない。こういう所がバラバラでやったら、やっぱりうまくいかないと思う。他のことでもいろいろな形で連携している。これからも別のことで連携する可能性もある。こういうことを考えても私たちはお互いを信頼しあうことがやっぱり大切だろうと思っている

人口減少が著しく財政基盤も脆弱な伊豆半島南部。

ただ、人々が生活する以上ごみは必ず排出されるものであり、今後処理の在り方はどうあるべきなのか、難しい局面に立たされている。