部活動の地域移行を前に…中学野球の名監督が一大決心　「どんな形でも教育現場であることは忘れない」　教師を辞め野球指導者の道へ

少子化や教職員の働き方改革の推進などを背景に公立中学の部活は地域のクラブに移行していくこととなっている。こうした流れに抗うように中学野球の名監督が大きな決断をした。

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橋爪敦志さん（47）：
原点は野球に携わりたい、野球の指導をしたいために教員の世界に入った

静岡県の中学野球界では知る人ぞ知る名監督がこの春、突然 教師を辞め、新たな挑戦に踏み出した。

国が主導で進めている部活動の地域移行。

少子化の影響や長時間労働による教職員の働き方改革が進む中、まず公立中学の部活が地域のクラブや団体に移行される。

橋爪さんの浜松市でも、平日の部活動は継続されるもの、休日は2026年9月から地域に移行予定だ。
教師にとって部活動の負担を解消する新制度だが…

橋爪敦志さん：
平日に練習をして土日に試合となった時、中途半端になると思った。本当に100％野球を教えられ
る環境に身を置きたい

指導歴は25年以上。

浜松市の選抜チームを全国優勝にも導き、プロ野球選手も輩出した橋爪さんにとって新制度は受け入れがたいものだった。

情熱を注ぎ続けた指導者人生だったが、今後は十分な指導ができないかもしれない。
　
そして悩みに悩んだ末…。

2025年4月、教師を辞めた。

スポーツ事業を手掛ける会社に転職し、主力事業である中学生の軟式野球クラブ・ノバエーラ浜松の監督として新たな一歩を踏み出したのだ。

藤田裕光 社長を筆頭に社員全員が野球の指導経験のある元教師。

教育のプロとして選手への向き合い方は熟知している。

橋爪敦志さん：
誰にでも指導できる年代ではない、とにかく話をちゃんと聞いてあげること。指導する側の一方通行ではなく子供たちの思いや意見を聞いて吸い上げる

市内全域から選手を受け入れたいと送迎用のマイクロバスを購入。

中学校に野球部がない、軟式をしたいのに硬式チームしかないなどノバエーラ浜松は様々な事情をかかえた子供たちの受け皿となっている。

ノバエーラ浜松の選手：
（硬式野球だと）まだ体が小さくて ケガをしやすい。ちょうど良いクラブを見つけたから、硬式野球はやめて軟式野球にしました。監督が実績ある人なのでその指導のもとでやっていきたいと思ってノバエーラ浜松を選んだ

橋爪さんの経歴や評判を聞いて選手が集まり部員は20人。

野球の技術はもちろん、礼儀やマナー、生活態度など、教師ならでは要素も指導方針に取り入れていきたいと話す。

橋爪敦志さん：
（Q野球の指導現場は楽しいですか？）楽しいですね、グラウンドにいる方が僕は性に合っています

家では育ち盛り3人のお父さん。

安定した教師の職を離れ、50歳目前での新たな挑戦には不安もリスクもあった。

収入はこれまでの3分の2に。

理想か現実か、悩んでいた夫に、妻は…。

妻・佳美さん：　
「（教師を）辞めても良いか」と相談があって「家事は全部俺がやる」と言ったので「どうぞ！ぜひ辞めてください」と諸手を挙げて賛成しました（笑）人生1回きりしかないから、嫌々一生を終えるより自分のやりたいことをやっていた方が、お金はなくてもそっちの方が楽しいので不安はなかった

妻の言葉で迷いを振り切った橋爪さんには今後さらなる目標がある。

12歳以下を対象にしたキッズ・小学生の部。

子供の運動能力が飛躍的に伸びる年代、通称“ゴールデンエージ”に着目したトレーニングを考えている。

橋爪敦志さん：
（Q.教師を辞めても生涯 教育者は変わらない？）それはブレていない。どんな形でも教育現場であることは忘れていない

“中学校”という枠を超え、これからは広い世界で教育ができる！と意気込む橋爪さん。

教師を辞めても地域の“先生”として、橋爪さんは生涯 教育者そして指導者であり続ける。