全国的に公営プールが減少　手ごろな値段で人気もなぜ？　富士市は来園者の7割が市外在住　赤字を税金で補填することに疑問の声も

猛暑が続く中、プールで遊ぶ人も多いだろう。しかし、いま手ごろな値段で人気の公営プールが危機に瀕している。

【動画】なぜ？減少続く公営プール　課題山積で存続か廃止の選択迫られる　どうなる夏の手軽なレジャー施設

夏休みに、にぎわいを見せる場所といえばプール。

中でも公営プールは手ごろな値段で楽しめるとあって毎年人気スポットとなっている。

利用者：
ほどよい規模、施設の内容が良い

利用者：
設備がかなり充実していて衛生的にもかなり清潔

利用者：
5人家族でも安くいけるので手軽に来られる

こうした中、7月19日にリニューアルオープンしたのが静岡市の大浜公園プール。

開園は今から95年前の1930年。

ただ、施設の老朽化が進んだため市は2023年から隣接する公園を含め約30億円をかけて改修に着手した。

目玉は長さ82mのウォータースライダー、さらに800リットルの水が降り注ぐバケツアトラクションなど、爽快感を味わえる遊具が目白押しだ。

男の子：
（Q.プールはどうですか？）メッチャ気持ちいい

女の子：
さっきスライダー行った。初めてだったから楽しかった

子どもたちは大いに楽しんでいる様子だったが、いま全国的には公営プールが減少傾向にあるという。

総務省によると2011年に3943カ所あった公営プールは2021年には3352カ所に。

10年で実に500カ所以上が姿を消していて、静岡県内でも三島市や裾野市が公営プールを閉園した。

開園から2025年で29年目を迎える静岡県富士市の富士マリンプール。

7月12日のオープン初日の来場者は2000人を数え、毎年10万人前後が訪れる人気のプールだが、頭を悩ませているのが施設の老朽化だ。

富士市文化スポーツ課・市川禎久 課長
こちらはストレートスライダー、すべり台だが、滑る面が劣化によって傷んでいて使用ができない状態。またストレートスライダーに上がる階段も塩害で錆が出てきていて安全性が保てない状況

経年劣化に加え、海岸沿いという土地柄、塩害によって金属部分の錆が目立つ。

富士市文化スポーツ課・市川禎久 課長
コストとしては運営に関わる経費、売店や食堂に関わる素材の経費、改修をする経費、修繕も行わなくてはならない、そんな経費が掛かってきている。2024年を例にすると、指定管理料として支払っている額が約2000万円あって、そのほかに市が負担する修繕費も2000万円ほどある

また、収益の悪化も課題の1つだ。

開園以降、コロナ禍前の2019年までは平均して約1300万円の黒字となっていたが、2022年に赤字に転落。

2024年の赤字は約2162万円となった。

そこで、市は2億5000万円かけて施設を改修した上で運営を民間に委託する計画を立てたが事業者へのヒアリングの結果、応募が見込めないため、募集を中断した。

富士市文化スポーツ課・市川禎久 課長
今後は市民を対象にしたアンケートを行い集計した結果や今後かかる経費を総合的に検討し、マリンプールを存続するのか、廃止するのか判断したい

このため、市は一転して民間への委託を断念。

今秋にも市民アンケートを実施し、今後の方針を決める判断材料とする考えだが、来園者の7割が市外在住という中で赤字が続いた場合、市民の税金で補填しなければならないことに疑問の声があがっているのも事実だ。

男性：
移転ですよね。もし本当に作るのであれば、もっと富士寄りだと思う。存続は難しいと思う

男性：
うまくやりくりして、お金を出してくれたら良い

女性：
赤字と聞くと何とも言えない。市の財政事情もあると思うので（存続か廃止かは）わからない

女性：
私は利用しないので廃止でも良い。子供も少ないので（税金は）高齢者に使ってほしい

女性：
入場料を上げても良い。それでも続けて欲しい

地方財政に詳しい静岡大学の太田隆之 教授は、方針を決めていく上で市民目線が大切だと指摘する。

静岡大学人文社会科学部・太田隆之 教授：
公営プールは公営プールなりの地域で果たしている役割や機能があるはず。さまざまなデータや現状を明らかにしながら（市民に）どうしていくのかを考えてもらうことが、自治体にとっては、その後の話をする上ではしやすい。本来そうあるべき。考えるのは市民であるということ。公営プールの位置づけを再検討、再評価してもらうことが必要

大きな曲がり角を迎えている公営プール…市民ニーズを見極めたうえでの判断が求められている。