見通し甘く補助金が大幅減額に…それでも発覚直後に伝えたのは最大会派のトップのみ 県議会への正式は報告は4カ月後 見直し余儀なくされた県立図書館の移転整備計画

県立中央図書館の移転整備計画

見通しの甘さにより暗雲が立ち込めている静岡県立中央図書館の移転整備計画。なぜ、このような事態に陥ったのだろうか?

【動画】補助金が大幅減額も県教委が伝えたのは最大会派のトップだけ 県議会への報告が遅れ常任委員会は紛糾 見通しの甘さで暗雲立ち込める図書館の移転計画

県議会文教警察委員会(6月30日)

県議会文教警察委員会・勝俣昇 委員(6月30日):
まだまだ事の重要性をわかっていないと感じてならない

文教警察委員会・坪内秀樹 委員(6月30日):
県庁内の事務方が思考停止に陥り、事業費や県費負担の増加に対する危機感が欠如していたことが最大の要因

文教警察委員会・山本隆久 委員(6月30日):
リーダーの塚本副知事に出席してもらい、どういう構想・方向で進めていくのかという説明を受けたほうがいい

不穏な空気に包まれた6月の県議会文教警察委員会。

やり玉に挙げられたのは県立中央図書館の整備にかかわる県教育委員会の対応です。

県教育委員会・池上重弘 教育長(6月30日):
県民の皆様に多大な心配をかけていることについて改めて深くお詫び申し上げます。誠に申し訳ございませんでした

公明党県議団・蓮池章平 団長

事の発端は2025年5月。

これまで136億円を見込んでいた国の補助金について、交付額が34億円に留まる見通しとなったことが明かされました。

自民改革会議・相坂摂治 代表(当時):
もう一度見直していくことも必要かなと思う

ふじのくに県民クラブ・四本康久 会長:
額にびっくりした

公明党県議団・蓮池章平 団長:
説明を聞いても納得はできていない

静岡県・川勝平太 知事(2020年当時)

なぜ、このような事態を招いたのか?

建物の老朽化を理由に元々は川勝前知事の時代に決まった県立中央図書館の移転。

当初は図書館を核とするレストランや宿泊施設などが入った“文化力の拠点”を整備することが計画されました。

しかし…

静岡県・川勝平太 知事(当時):
やくざの集団もいますからね。やくざもいるじゃないですか。ごろつきがいるじゃないですか

2019年、川勝知事(当時)が構想に賛同しない議員を侮辱する発言をしたことで最大会派の自民改革会議が猛反発。

その結果…

静岡県・川勝平太 知事(当時):
これはいったん白紙に戻すのが正しいと思う

文化力の拠点構想は立ち消えとなり、図書館の移転計画だけが残ることになりました。

その後、当初180億円程度とされた事業費は人件費や資材の高騰から298億円まで膨れ上がっています。

県教育委員会

そこへ来て発覚した補助金の減額問題。

ただ、公共政策学の専門家はある程度は想定しうる事態だったと指摘します。

静岡産業大学経営学部・小泉祐一郎 教授:
社会資本整備総合交付金は全国から要望が殺到すると交付額が減ってしまう。国に聞いても教えてくれない。担当者が聞いてもどれくらい貰えるかはわからない。相当貰えるかもしれないし、もらえないかもしれない

また、この問題を複雑化させているのが交付金の見込み額を県議会に伝えたタイミングです。

県教育委員会は1月の段階で想定額を大幅に下回る交付額になることを把握していたものの、その事実を伝えたのは自民改革会議の当時の代表だけでした。

正式に県議会に対して報告をあげたのは4カ月が経過した5月になってからでした。

静岡産業大学経営学部・小泉祐一郎 教授

静岡産業大学経営学部・小泉祐一郎 教授:
財政的な財源見通しについては流動的な面がある。そういうところを議会に対して最初からしっかり説明しておけばこんなに揉めない。そこの説明を当初の段階からしっかりやるべきで、財源的な説明が大雑把で不十分だったと見ている

言うまでもなく県教委の責任は大きいものの、一方で補助金や交付金について専門的な知識を持つ県の財政当局にも責任の一端はあると指摘します。

その上で、今後別の事業で同じような失敗を繰り返さないためにも、将来にわたり金銭負担をする場合は予めその内容や限度額を定める債務負担行為であっても丁寧な説明を心がけるべきと話します。

静岡県・鈴木康友 知事

静岡産業大学経営学部・小泉祐一郎 教授:
債務負担行為という予算額の議決ではないという点に説明の欠落ちが生じる1つの要因があるのではないか。予算を「今年度いくらです」ということではなく、「数年間でいくらの契約をしたい」という議決なので、そういう意味では普通の予算と比べると説明がどうしても簡略化しがちな点がある

鈴木知事は今回の事態を受け、プロジェクトチームを立ち上げた上で新たな図書館の計画を見直すことを表明。

大型の公共事業は多額の税金が投じられることになるだけに、責任ある調査や協議が求められています。

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