生産者は最盛期の4分の1に減少 静岡県の特産品・クラウンメロンがピンチ? 新規就農者の誕生は実に33年ぶり 参入が難しいワケ

クラウンメロンの新規就農者

品質の良さから高い評価を得ているクラウンメロンですが、今ある危機に瀕していることをご存知でしょうか?

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減少傾向にあるクラウンメロンの生産者数

袋井市を中心に県西部で栽培されているクラウンメロン。

静岡県が誇る特産品の1つです。

“クラウン”という名前の通り、品質の高さが自慢で今や国内のみならず海外市場からも引き合いが。

アメリカやイギリスなど、10を超える国と地域に輸出されています。

袋井市在住(30代男性):
食べた瞬間に広がる上品な感じ

掛川市在住(50代女性):
孫が来た時や家族が集まった時に食べたりする。メロンが嫌いだったけど、袋井のメロンを食べてから大好きになった

袋井市在住(60代女性):
誇り。子供の頃からあるから、あるのが当たり前

高級メロンとして確かな地位を確立しているクラウンメロン。

しかし実はいま、ある深刻な問題を抱えています。

県温室農協クラウンメロン支所・鈴木陽介 事務長:
生産者が毎年減少傾向にある。そうなってくると産地として発展が難しい

かつては850人いた生産者も1970年代をピークに減少が続き、今では200人ほどに。

クラウンメロン農家・須山弘明さん

磐田市でメロンを育てる須山弘明さん(44)。

クラウンメロンの世界では実に33年ぶりとなる新規就農者です。

クラウンメロン農家・須山弘明さん(44):
おいしいメロンを人に食べてもらって喜んでもらえる。すごく誇れる仕事だと思った。1玉1玉、愛情を育てられるところがすごくしっくりきた。職人のような仕事がしたかった

大学時代は静岡大学の農学部で学ぶなど、農業に興味はあったものの広告会社で営業の仕事をしていたという須山さん。

ただ、農業への思いは捨てきれず、40歳にして一念発起し13年働いた会社を退職しました。

そして3年に及ぶ研修を経て、2025年4月に独立。

ひとりの農家として毎日メロンを育てています。

クラウンメロン農家・須山弘明さん(44):
いかに良いメロンを安定して作るか。天気によっても水の量を変えなければいけない。そこをつかんでいくのがすごく難しいけれど、よくできた時に手応えを感じながら日々過ごしている

メロン栽培用ハウス

それにしてもなぜ、4半世紀以上もの間、新規就農者が現れなかったのか?

それは昨今の物価高にともなう資材の高騰はもちろんのこと、一番の理由は多額の初期投資が必要だからです。

県温室農協クラウンメロン支所・鈴木陽介 事務長:
露地栽培と違って専用の温室、ガラス製の特別な構造の温室が必要で、それ以外にも1年中作るとなると冬場は温室を温めるために燃料を使う。生産するためのコストがかかってしまう

メロン栽培をするためのハウスを建てるには1棟あたりに少なくとも1200万円以上の費用がかかる上、専業の農家として成り立たせるためには平均で8棟の温室が必要といわれ、ボイラー設備なども整えると投資額は優に1億円を超えてしまいます。

こうしたなか須山さんは高齢のためすでに引退した元農家を紹介してもらうことでハウスを借りることができ、初期投資の大幅な圧縮に成功。

太い網目が入ったクラウンメロン

ただ、施設は立派でも品質の高いメロンを供給し続けなければ農家として生計を立てることができず、メロンと向き合いながら勉強する日々です。

クラウンメロン農家・須山弘明さん(44):
成長ステージごとに乾かしたいところや水をたくさんあげたいところがある。口で言うのは簡単だが難しい。例えばこれはネット(網目)の入り方が、太いネットが何本か入ってしまっている。美しさにかける。失敗するとこうなる。水加減が多すぎたり少なすぎたりするとこうなる。経験が少ないので管理が行き届かないところもあるけれど、それでもここまで育ってくれたのでまあいいでしょう

元クラウンメロン農家・横井義明さんと話す須山さん

7月からはいよいよ初めての出荷も始まり、この日は3回目の収穫作業の日。

元クラウンメロン農家・横井義明さん(79):
きょうは甘度(糖度)を計測に行ったよね、何度くらいあった?

クラウンメロン農家・須山弘明さん(44):
15.0

元クラウンメロン農家・横井義明さん(79):
すごくあったな。いつもなら14から15の間

クラウンメロン農家・須山弘明さん(44):
意外とあった

須山さんの隣にはハウスを貸してくれている横井義明さん(79)の姿もあります。

元クラウンメロン農家・横井義明さん(79):
一生懸命やっているのでメロンも良くなってきた。夏場暑いけれど頑張ってやってもらいたい

須山さんが出荷するクラウンメロン

生産者番号は「986」。

須山さんは自分の名前と番号が記された箱を前に、喜びと同時に責任感も感じている様子です。

クラウンメロン農家・須山弘明さん(44):
メロンを最初から最後まで自分の手で作って、自分の名前で出荷することがずっと前からの1つの目標というか夢だったので、それが達成できてすごく嬉しい。クラウンメロンの組合員が築いてくれたブランドがあるので外から入ってきた自分が汚すわけにもいかないし、きちっとしたメロンを送り出したいという責任感が強くなってきている

誕生から100年以上の歴史を持つクラウンメロン。

品質の高さを将来へとつなぎ、国内外の需要に応え続けるためにも新たな担い手を増やすことは急務です。

それだけに、須山さんがそのロールモデルとなるのか注目されています。

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