ドローンによる遮光材の散布とイチゴ
甘くてジューシーな味わいのイチゴ。しかし、いま”ある異変”が起きていて、収入の落ち込みなど農家の人たちにとって悩みの種となっています。
【動画】暑さが影響?イチゴに異変 近年は”高単価”のクリスマスシーズンに間に合わない事態 救世主はドローン?ハウスの上から遮光材を塗布 畜産分野にも広がりイチゴの出荷作業(資料)
静岡県東部や静岡市などを中心に栽培されている冬の味覚・イチゴ。
「紅ほっぺ」や「きらび香」といった品種を中心に静岡県の生産量は全国5位を誇ります。
女の子:
甘くて食感が好き。イチゴジャムが好き
女性:
期間限定なのでその期間はイチゴをよく買って食べる
女の子:
大好きです。甘くておいしいから(冬になるのが)待ち遠しい
片山真秀 主任
ただ、このイチゴをめぐって実は近年、農家を悩ませているある問題が…。
JAふじ伊豆韮山営農経済センター・片山真秀 主任:
例年12月上旬から中旬に(実が)採れるのが、(近年は)クリスマスを過ぎたあたりから採れてくるという状況。イチゴは基本的に年内に採れた方が単価が高いがそこが採れないということなので、なかなか(農家の)所得が上がらず影響が出てしまう
JAふじ伊豆の片山真秀さんによると、クリスマスケーキの主役であるイチゴの生育がここ数年、遅くなっていると言います。
森洋二郎さん
伊豆の国市で7棟のハウスを使って「きらぴ香」を育てている森洋二郎さん。
甘くてコクがあるイチゴが評判で、特にクリスマスシーズンはホテルや洋菓子店からの発注が絶えません。
しかし…。
イチゴ農家・森洋二郎さん:
クリスマスに向けた小玉のイチゴが去年も採れなかった。量的にも去年12月は(例年の)8割程度で2割ほど収量が減少している
その理由はというと…。
イチゴ農家・森洋二郎さん:
暑いと花芽分化というイチゴの生理現象が遅れてしまう
花になるため芽を形成する花芽分化。
ただ、ハウス内の気温が25℃を超えてしまうと花芽分化が進みにくいと言われています。
イチゴ農家・森洋二郎さん:
遅れた分が、そのまま収穫までの期間も遅れることになるので最初のスタートが遅れることはトータルでみても、減収の要因になりえる
イチゴ農家にとってクリスマスシーズンは1年で一番需要が高まる、まさに“書き入れ時”。
裏を返せば、この時期に出荷が間に合わないと収入が大幅に減ってしまうため、暑さ対策は待ったなしの状況です。
ドローンによる遮光材塗布のデモンストレーション(7月26日)
こうした中、伊豆の国市で7月26日に行われたのが農業分野におけるドローンの活用を事業化しているソラモによるデモンストレーション。
太陽の日差しを遮る塗料をドローンによってハウスの屋根に吹き付けます。
ソラモ・清博幸 社長:
遮光剤は30年くらい前からあり、光と温度をコントロールする商材だが、人が高さ3~4mのビニールハウスの上に乗って遮光剤を屋根に塗布しなくてはならない。転落の危険性もある高所の危険作業ということもあり、そうした点が1つの課題だったが、最新のドローンを使い人に代わってより安全に正確に散布できないかということで、今回ドローンを使ってビニールハウスの上に遮光剤を塗布する取り組みを始めた
参加したイチゴ農家
この日のハウスの表面温度は概ね50℃ほど。
それが遮光材をふきつけることで41℃前後まで下がり、効果も約2カ月にわたって続くことからイチゴの適切な生育が期待できるといいます。
イチゴ農家:
9~10月の猛暑、0.5℃でも1℃でも下げるようにこれは良い。やりたい、明日にでもやりたい
イチゴ農家:
自分は去年良かったが、(今年も)同じになるとは思わないので、少しでも暑さ対策をして花芽が早く育てば良いという意味で遮光(剤)をまくことを決めた
鶏舎で世話をする鈴木信司 代表
また、こうしたドローンによる遮光剤の吹き付けは畜産分野でも活用が始まっています。
5つのハウスで約1000羽のニワトリを飼育している富士市の養鶏場「そらとふじ」。
去年までは遮光カーテンなどで日差しを遮っていましたが、暑さの影響でニワトリたちの食欲が落ち、中には死んでしまった鳥もいたため、7月に初めて鶏舎の屋根に遮光剤を塗布しました。
遮光剤を塗ってから約1カ月。
ニワトリたちの様子はというと…。
平飼い養鶏農園「そらとふじ」鈴木信司 代表:
去年に比べたら、食べる量も春や秋と変わらず良くなってきている。元気な鶏を見ていたらそれだけで元気なれる、とても良い
ソラモによると遮光材は主に炭酸カルシウムから出来ていて、一定期間が経過すると雨によって自然に分解されるため、これまで健康被害の報告はないということです。
平飼い養鶏農園「そらとふじ」鈴木信司 代表:
データで(ハウスの表面温度が)10℃くらいは下がっているのは見せてもらったが、体感としてハウスの中は3℃くらいは下がっていると思う。去年に比べてずいぶんと涼しい。これだけ目に見える効果があるので、卵の産卵率が上がるのかデータはこれからだが、そこも期待しているし来年以降もぜひ継続したい
猛暑から酷暑へと変わる日本の夏。
新たな技術などを取り入れながら、これまでと同じような生産体制を維持するための試みが進められています。