
2025年4月20日放送
- 会場
- テレビ静岡(静岡市)
- 講師
- 僧侶・アナウンサー 川村妙慶
プロフィール
福岡県生まれ。真宗大谷派僧侶。
関西を中心にラジオ番組のパーソナリティーなどをつとめる。
ホームページで日替わり法話を毎日更新し、メールでの悩み相談にも応じている。
第 2428 回
何を求めて生きているのか
「私たちは何を求めて生きているのか?」と聞かれたら、何を想像しますか?やはり、「幸せ」を求めて生きているのではないでしょうか。
「幸せ」とは、WHOの定義では、『体、心、社会』この3つのバランスがとれたことを言います。
まずは、『体』。健康で長生きしたいですよね。
そして、体は健康だとしても『心』に不安を抱えたりしたら、それは健康とは言えません。心とは、安心感とも言えると思います。「家族と仲良く」「愛する人と、楽しく過ごす」といった人間関係の充実も、安心につながります。しかし、お釈迦様は、「あの人がいたら安心だ」「これからもこの人と共に生きていきたい」と思うのもわかるけれど、「それは楽しみであって人に依存することではない、いつか別れなければならないんだ」と教えてくれます。
さらに、「お金」がないのも不安ですよね。お金は確かに大切ですが、争いの元になることもあります。「幸せ=思い通りになること」だと思っている人がいますが、仏教に「天人五衰」という言葉があります。「天人」とは、天にも昇るような嬉しいことを言い、あまりにも思い通りのことが続くと、「五つの衰え」が出てきますよと教えてくれるのです。その五つの衰えとは何でしょうか。
一つ目は生活に張りがなくなり、「生きている」という手応えが持てなくなる。
二つ目は、「健康不安」。「健康で長生きしたい」という意識が強くなり、お金があると、「これも買っておこう」「体にいいから飲んでおこう」などと、常に不安が襲ってくるということです。
三つ目は、「気力の衰え」です。すべて思い通りになったことによって、自分は何のために、何を目指して生きていくのか?という「目標」がなくなってしまいます。
四つ目は、「誇りを失う」。最低人間として守らなければいけないことってありますが、思い通りになればなるほど、その感覚や意識が乱れてくるのです。
そして五つ目が、「今の状態をなかなか喜べない」ということです。与えられているのに、不満に思ってしまう。「当たり前」と思ったら「ありがとう」という言葉は出ませんよね。
さて、健康の定義のあと一つは、『社会とのつながり』を持つことです。たとえお金がたくさんあっても働く。退職なさった方だったら、何か奉仕をさせていただくなど、そうやって社会とつながり、具体的に動かないと気づかないことがたくさんあります。
大切なのは、「今日、生きてみる」ということです。生きてみなければわからないことだらけです。私たちには「宿業(しゅくごう)」というものがあります。その「業」をどうか引き受けて、コツコツと歩いてみませんか。「職業」にも業がつきます。たくさん仕事がある中で、なぜあなたはそのお役目なのですか?
それも「ご縁」なのです。そのご縁を、後輩や社会にもつなげてほしいのです。
私は何を求めて生きているのか。
「私は私であってよかった」とうなずけた時に、「生きていける」と思える。「この私がここに生きている」ということを喜びながら、まず今日を生きていきましょう。