
2025年5月25日放送
- 会場
- 菊川文化会館アエル(菊川市)
- 講師
- フリーアナウンサー むかいさとこ
プロフィール
大阪府出身。元福島テレビアナウンサー。俳優、ナレーター業のほか、講演や研修も行う。2013年、元小学校教諭の鹿島和夫氏と「あのね文庫 詩 コンクール」を立ち上げる。
第 2433 回
緊張を「伝える力」に変える
実は私、今ものすごく緊張しています。でも、周りの人からは緊張しているように見えないとよく言われます。それは緊張を隠すことができる技を持っているからなんです。
緊張はどこに現れるかというと、心臓がドキドキしたりと“心”に現れます。そして体が震えたりと“体”に現れます。心をほぐしてあげると体は楽になるし、体をほぐしてあげると心が楽になる。これをよく理解すると、自分の緊張をコントロールすることができるようになるんです。
お芝居を志して文学座に入った時に言われたんですが、「緊張は伝えるための責任を持っている証だよ、緊張したほうがいいんだよ」って。緊張していいんだ、これが責任を持ってるって事なんだと、自分で自分を褒めることができるようになった。緊張が嫌なものだと思わなくなりました。
物事って捉え方次第で変わるし、人によって違う。だからコミュニケーションは”競争”
ではなくて、協力しながら奏でる”協奏”なんです。相手の言ったことに共感することがとても大事です。
そして、話をするときに自分が何を伝えたいのかという“意図”を明確にしておくこと。意図がないと、誰かが見ていることに意識がいって、どんどん悪い方向に緊張が使われていくんですよね。「このことを伝えるんだ」という“意図”が定まっていると、緊張はどんどん緩和されていくんです。
意図が定まっていても、人から見られるとどんどん緊張してくる。心が緊張してしまったら、今度は体をほぐしていきます。緊張するとどうしても肩が上がったり、眉間が閉じてきます。力を抜いて肩をグッと下げるだけで全然違う。そして眉間に窓があると思って、その窓をパッと開いてライトを当てるような、そんなイメージをして話すだけでも全然違います。
文学座で必ず習う[こんにゃく体操]という、本当に緊張がほぐれる体操があります。使うものは2つ、素直な心と重力を感じること。どうやるのか。こんにゃくになったような気持ちで手をだらんと下げて、力を抜いてジャンプします。重力に自分の身を素直に委ねるというのがポイントです。体にかかる力がいっぺんに抜けるんですね。私はアナウンサー試験の前でもトイレに駆け込んで、この体操をこっそりしていました。心のお守りなんです。10秒でも20秒でもしてみると、本当に体がほぐれて声も変わります。
緊張はしてもいい。一番大切なのは「伝える力」。物事を伝えたいわけです。なので、緊張を伝える力に変える方法を身につけておけばいい。心と体をほぐすトレーニングを続けると、だんだん体が覚えて力の抜き具合がわかってきますよ。あらゆる場面で皆さんにも実践していただきたいなと思います。