2025年8月10日放送

会場
テレビ静岡(静岡市)
講師
教育評論家 親野智可等

プロフィール

1958年静岡県生まれ。公立小学校で23年間教師を務める。
教育現場で親が子どもに与える影響の大きさを痛感。
教師としての経験と知識を子育てに役立ててもらいたいとメールマガジン「親力で決まる子供の将来」を発刊し、評判となる。

第 2444 回
親子が笑顔になる「ずるい子育て」

ビジネスの世界では、より少ない費用・労力・時間で良い結果を出す、つまり「効率が良い」ことを求められます。ところが、子育てに「効率」を当てはめると、「手抜きをしているみたい…」など、あまり良く思われないことが多いようです。でも、子育てにこそ「効率」が大事なのではないか、「楽で、楽しくて、結果もいい」そんな『効率の良い子育て』を目指してもいいんじゃないか、と私は思います。

例えば、「しつけようとしすぎない」ことです。
あるお父さんがとてもしつけに厳しい方で、特に食事のマナーについて口うるさく子どもに伝えていたそうです。楽しいはずの食事の時間がどんよりとした雰囲気になり、子どもはだんだん、お父さんのことが嫌いになっていきました。誰しもそうですが、嫌いな人が言うことは聞く気にならないですよね。その結果、子どもは反抗的になり、マナーや生活習慣など、お父さんが願う姿と真逆の方向に行ってしまいました。これでは効率が悪いですよね。
そこでまず大事にしてほしいのは、親子関係を良くすることです。子どもが「お父さん、お母さんのことが大好き!」と感じる。そうすると、人間には「大好きな人のようになりたい」という気持ちがありますから、自然と好きな人の真似をし始めます。親自身が子どもに求めるマナーや生活習慣で過ごしていれば、放っておいても親と同じレベルになります。楽しく親子関係を良くして、その結果しつけもできる。これこそ「効率の良い子育て」ではないでしょうか。

そして次のポイントは「目指すのは、子どもが勝手に幸せになっていくこと」。
ある研究で『大人は何に幸せを感じているのか』を調べたところ、「高学歴」「高収入」に幸せを感じている大人は思っていたより少なく、顕著に多かったのが「自己決定の度合い」という結果がでました。「子どもの頃にやりたい習い事をやらせてもらえた」「進学先、就職先を自分の意志で決めた」など、人生を振り返り「自己決定をした」と思えている大人が最も幸せを感じているんです。つまり、子どもが幸せになるためには、自己決定の度合いを高くしてあげればいいわけです。子どもがやりたいことを応援してやらせてあげる。応援してくれる親に子どもは感謝しますから、親子関係も良くなる。効率が良いわけですね。もし、やりたいことがどうしても無理な場合でも、すぐに否定せず、まずは共感してから伝えることも大切だと思います。

子育ては、まず親が楽で楽しいことが大切です。親が大変になってしまうと、そのストレスが子どもに向かってしまうこともあるからです。大きな愛情があるがために空回りして、つい否定的な言葉で子どもの自己肯定感を下げてしまったり、親子関係が悪くなってしまう。親も子どもも頑張っているのに結果が良くない、つまり「効率が悪い」子育てになっていることが非常に多いです。
親も子どもも笑顔になるように、ぜひ発想の転換をして「子育て」にも「効率」ということを考えてみてください。

過去の放送一覧に戻る