2025年9月7日放送

会場
焼津文化会館(焼津市)
講師
NPO法人ベースボールスピリッツ理事長 奥村幸治

プロフィール

1994年、イチロー選手が210安打達成時に専属の打撃投手を務め、"イチローの恋人"として知られる。
田中将大選手が所属していた「宝塚ボーイズ」監督。
世界少年野球大会で日本代表チームを率い、3年連続世界一に。

第 2448 回
一流の習慣術と目標達成術

私はオリックスブルーウェーブで、イチロー選手が1994年に日本新記録となるシーズン210安打を達成したときに、専属の打撃投手を務めていました。

その数年後のことです。メジャーリーグのキャンプを見に行く機会があり、そこで選手たちに「どうすれば成功できるか?」と質問したところ、全員が同じことを答えました。

まず「強い体を作ること」。強い体がないと人より努力ができない。努力ができなければ自分の技術は上がらないし、結果を出し続けることはできない。

次に「運を掴むこと」。運を掴むには、いい人間になって、人として当たり前のことをする。実際にどんなことを心がけているかと聞くと「お金があるからできることかもしれないけれど、メジャーリーガー全員が貧しい国の支援や基金をしている。そうするとファンがもっと応援してくれる。そして、自分に辛いことがあった時に、ファンの応援でまた頑張ろうという気持ちにさせてもらえる。だからファンの皆さんに僕たちは感謝しかないんだ」と、話してくれました。

そんなメジャーリーグで結果を出し続けてきたのがイチロー選手です。イチロー選手に近い技術を持っているプロ野球の選手はたくさんいますが、アメリカで10年連続200本安打、通算3千本安打という記録を達成できる選手は、他にいません。なぜイチロー選手は結果を出せたのでしょうか。

私はイチロー選手の打撃投手として共に過ごすなかで、多くのことを学びました。

彼は常に「心・技・体」の3つのバランスを考えて過ごしています。「今日の試合早く行きたいな」「早くバットを持ちたいな」「早く練習したいな」こんなふうに、どんな時でもプラスの気持ちを持ち続ける、これがイチロー選手の大前提の考え方です。ある時、日本の子どもたちに「どうすればたくさんのヒットを打てるの?」と質問され、こう答えました。「『ヒットが打ちたい』『うまくなりたい』ずっとそんな気持ちでいられれば、向上し続ける努力ができるから、この気持ちが本当に大切です。そして僕はメジャーリーガーの誰よりも一番、この気持ちを作ることができます」。イチロー選手は、技術を支えているのは間違いなく「心」である、ということが分かっていて、常に前を向いて過ごしています。

ある時、イチロー選手に「なぜそんなに長く集中して練習できるのか?」と聞くと「僕には、その日のうちに必ずやり遂げる目標があります。その目標をクリアするために練習しているので、時間を決めて練習をしたことがありません」と言われました。さらに目標について、「目標は高すぎると、達成できなかったときに辛くなってしまい、諦めや挫折につながります。頑張ったら手に届く目標を設定することで、いつまでも努力ができます。だって目標がクリアできたら嬉しいでしょう。だから充実した毎日が過ごせてプラスに考えることができるんです。目標の位置をどこに掲げるかがすごく大切です」と話してくれました。

私は打撃投手を引退してから24年間、少年野球の監督をしていました。ついチームで同じ目標を掲げがちですが、子どもたちには体格の違い、技術の違い、役割の違いがあるのだから、それぞれ目標の位置は違っていいわけです。自分にとっての目標の位置を明確に定めて、その目標に向かって、まずは動くことが大切だと思います。

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