2025年10月5日放送

会場
アミューズ豊田 ゆやホール(磐田市)
講師
花まる学習会代表 高濱正伸

プロフィール

1959年熊本県生まれ。東京大学大学院修了。93年、思考力などを重視した「花まる学習会」を設立。その後本格的な学習方法を伝授する「スクールFC」を設立。子どもの「生き抜く力」を育てることを重視した教育が好評。

第 2452 回
父親の役割 ~家族の幸せを研究しよう~

昭和30年代、僕が子どもの頃、家に帰ったら「お帰り」と笑顔で母親が迎えてくれました。近所のお友達もみんなそうで、「お母さんは笑顔」と思って育ちました。ところが大人になり、たくさんの親と関わる中で、多くのお母さんがイライラしていることに驚いたのです。

昔は、「子どもをみんなで育てる」というのが一般的でした。常に母親の近くに先輩のお母さんや、近所のおばちゃんがいて、「わかるよ」「大丈夫だよ」と言ってもらえる。お母さんは安心感の中で子育てができていました。それが戦後になって生活が変化することで、親との同居や近所付き合いがなくなり、お母さんはひとりで子育てをする状況に追い込まれました。この「孤立」こそが、お母さんのイライラの原因です。

最近の研究では、子どもの健やかな成長にとって「お母さんが笑顔で安心していること」が最も重要であると証明されています。ですからお母さんは、「仕事」や「推し」、「ヨガ」など、自分から笑顔になれる物や事を持つことが大切です。

では、お父さんは何をすればよいのでしょうか。

「妻の自由研究」をしてほしいのです。なぜ「自由研究」なのか?趣味も、何人兄弟かも、どこで育ったかも、それぞれ。でも夫にとって妻は唯一無二で、世界にたった一人の存在です。この時代の、母親が孤立した状況で救いになるのは夫ぐらいしかいないわけです。ですから「妻を笑顔にできるのは自分しかいない」という気持ちで、ぜひやってみてください。

妻を笑顔にするために具体的に何をするかというと、例えば僕は、「自由研究ノート」を作っています。

あるとき、バッグを妻にプレゼントしたけれど、反応がいまいちでした。後で聞いたら、わざとらしかったそうです。ところが別の日、仕事の合間に買ったあんみつを渡したら、とても喜びました。なぜバッグよりあんみつの方が喜ばれたのか、他のお母さんたちに聞いたら、口をそろえて「想い」だと言いました。自分の好きなものを覚えていて、忙しい仕事の合間に買ってくれたという「想い」が嬉しいのだそうです。これらのことをノートに書いて、ではその「想い」がどうしたら伝わるか、研究するわけです。

もうひとつ、伝えておきたいのは、子育てには、子どもを守り育てるという「母性」と、子どもが自立できるよう時には厳しく導く「父性」が必要だということです。

僕が尊敬する教育者はこう言っていました。「理想は、面白くて、怖くて、遊んでくれるお父さん」。最近では、子どもが傷つくことや失敗することを恐れて、怖くなれない、つまり厳しくなれないお父さんが増えています。子どもが世の中に出たときに、嫌なことに直面しても心が折れずにはねのけられる、そんな強さを持てるように、「ダメなものはダメ」と伝えることが大切です。お父さんがその役割を果たすことで、お母さんも安心して子どもを守ることができます。

縁があって一緒になった夫婦ですから、子どもたちが幸せであるために、お互いの役割を大切にして支えあい、笑顔で子育てをしていってほしいと思います。

過去の放送一覧に戻る