2026年3月15日放送
- 会場
- 浜松市総合産業展示館(浜松市)
- 講師
- 明治大学文学部教授 齋藤孝
プロフィール
1960年静岡県生まれ。東京大学法学部卒業後、同大学院教育学研究科博士課程等を経て現職。専門は教育学、身体論、コミュニケーション論。
「声に出して読みたい日本語」ほか、著書多数。
第 2473 回
上機嫌の魔法
人は上機嫌な時もあれば不機嫌な時もあります。それは気分によると思われていますが、落ち込んだまま引きずっていては、物事がうまくいきません。そこで私は、上機嫌を「技」として身につけ、継続的に上機嫌でいられる魔法を考えました。
哲学者のアランは「笑うから幸せなのだ」と言っています。これは、「『気分』に支配されてしまうと自分をコントロールするのが難しいので、先に笑顔を作る、つまり『体』を動かすことで気分を上げる」という考え方です。例えば、人は温泉に入ると気持ちよくなりますから、機嫌が悪くなる人はめったに見かけません。「体」を整えることで上機嫌でいられるのです。手足が冷えていたり、寝不足だったり、お腹が空いていたりすると機嫌が悪くなりますから、そんな時は体を温めたり、おいしいものを食べたりしましょう。私は気持ちが落ちた時にとっておきのご褒美で、うなぎを食べる。「今日は少し落ち込んだけれど、うなぎを食べたからちょっとプラスだな」といったように毎日を過ごしていくと、機嫌の良い状態が続きます。
次に大切なのは「笑う・驚く・褒める」ことです。いずれも「多めに」というのがポイントです。ささいなことにも多めに笑うと、場の雰囲気が明るくなり、相手もリラックスできて、自分の気分も上がってきます。そして、どんなことにも多めに驚く。試しに、テレビを見て驚く練習をしてみてください。そうすると実際に人と話すときにも反応が良くなります。それから、多めに褒める。競争心や妬みがあると上手に褒められませんから、そういった思考から抜け出すためにも、考える前に自分から進んで褒めることが大切です。
また、「頭」からアプローチできることもあります。それは「物事を整理する」ことです。心配事があると不機嫌になってしまいますから、まずは紙に書きだします。自分ではコントロールできないことや終わったことは考えず、できることのみに集中して取り組むと、物事が整理されて、すっきりします。頭を整理することで心も整理されます。これは知力を持って生まれた人間の強みですから、ぜひ取り組んでみてください。
不機嫌な状態から抜け出したくても、抜け出し方がわからない。そんな時は先に体を動かしてリアクションをとることで、気分も上がっていきます。それが習慣になると、機嫌がいい状態を「技」として自主的に作れるようになってきます。体と頭の両方からアプローチして、上機嫌な人生を楽しみましょう。