2026年5月31日放送

会場
テレビ静岡(静岡市)
講師
お笑い芸人 山田ルイ53世

プロフィール

兵庫県出身。お笑いコンビ 髭男爵のツッコミ担当。
地元の名門中学に進学するも中途退学。6年間の引きこもりを経験。大検合格を経て愛媛大学に入学。その後中退し上京、芸人の道へ。

第 2484 回
僕たちにはキラキラ生きる義務などない

日々生きていて、ソワソワさせられることってないでしょうか。いま僕が1番ソワソワさせられているのは、「投資してる?」という質問です。その次に「人間ドックに行ってきた」などの健康に関する話。「みんなきちんと考えてるんだな」って、なんとなく焦らされてしまう。
他にも、ソワソワさせられる代表としてSNSは大きな存在です。手の込んだキャラクター弁当や、素敵な家でホームパーティーをしている写真を見ると、「こんなにキラキラ輝いて生きている人がいるのか」と自分と比べて落ち込んだり、「こんな暮らしがしたい」と焦ったり、自分もキラキラしているように見せようと無理をして、疲れてしまう人もいるんじゃないでしょうか。
 
僕は、SNSは一種のエンターテインメント作品だと思って見ています。芸能界にいると少なからず、キラキラした投稿には演出・脚色が入っていると分かるからです。例えるなら住宅展示場と一緒で、「こんな素敵な家に住みたい」と思いますが、なぜ素敵かというと、そこには人が住んでいないからです。演出されているから素敵に見える。こんな風に、あくまでもエンターテイメント作品という認識を持ってSNSと接してみたらどうでしょうか。
 
そうは言っても、ソワソワしたり嫉妬を覚えることってあります。僕で言うと、同期の芸人が冠番組を持ったり、自分が出ていない番組に出ているのを見たりした時です。でもある時、「僕たちが気にしていても、相手は何にも気にしていない」ということに気付きました。勝手にソワソワさせられて自分のことに手がつかないのは、自分の機嫌や人生を操作するリモコンを他人の家に置いているようなものです。「自分に集中しよう、自分のリモコンは懐に忍ばせておこう」と考えるようにしました。
 
なぜ僕がこんなひねくれた考え方になったのか、それは中学2年生から6年間引きこもり、大学も1年足らずでドロップアウト、キラキラとは程遠い生き方をしてきたからです。自分にとってその6年間は完全に無駄であったと後悔していますが、そう伝えると「その期間があったから、今の山田さんがあるんですよね」という、いわゆる美談に持っていこうとする人がいます。引きこもっていた期間を「海の底深くに沈んでいる状態」に例えるとすると、なんとかもがいてもがいて水面まで上がってきたのに「底まで行ったんだから、なにか宝物を掴んできたよね?」と問われるようなものです。僕は、「上がってきただけでいいじゃないか」と思うんです。
 
今の社会は「多様性」とよく言われますが、一色に染めようとする「みんなキラキラ、素敵に前向きに頑張ろう」という風潮もあると思います。僕のように向いてない、できない人もいる。みんながみんな同じじゃなくてもいいんです。僕たちにはキラキラ生きる義務などありません。意識高く、映えてないとダメだ、という世間の決めた「キラキラ」や「普通」を追い求めず、もっと楽に生きてもいいんじゃないでしょうか。

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