2026年6月14日放送

会場
テレビ静岡(静岡市)
講師
お笑い芸人 山田ルイ53世

プロフィール

兵庫県出身。お笑いコンビ 髭男爵のツッコミ担当。
地元の名門中学に進学するも中途退学。6年間の引きこもりを経験。大検合格を経て愛媛大学に入学。その後中退し上京、芸人の道へ。

第 2486 回
夢なんて持たなくていい

今の世の中は「夢」を聞きすぎていないでしょうか?
 
僕は仕事柄、「なぜ芸人になったんですか」とよく聞かれます。何かしら夢を持って芸人を目指すのが普通だと思われていますが、僕に限っては、「12歳で不登校になってから6年間引きこもり、なんとか入った大学もすぐにドロップアウトして、学業で身を立てるのは無理だという諦めの中で上京し、どうしようもなく養成所に入った」、という人間です。僕のように、そもそも夢を持てない人もいるよって思うんです。
 
夢を持てることはとても素敵なことですが、裏を返すと「夢を持っていないとかわいそう」「夢を持てるといいのに」という考え方が普通になっている気がします。僕が小学校で講演会をした時の話ですが、小学生の女の子から「山田先生は小学生のとき、どんな夢を持っていましたか?」と聞かれたんですね。僕は嘘をつきたくなくて、「そもそも夢なんて持っていなくてもいいんだよ」と答えました。その女の子はちょっと安心したような顔をしたんですけど、それを取り囲んでいた保護者のみなさんには「なんちゅうことを言ってくれんねや」と言わんばかりの鬼の形相をされました。世の中には強い考え方というのがあるんだと感じました。
 
さらに、夢を持った理由にまで美談を求められているように感じることがあります。「子どもの頃に牛の出産シーンを見て、動物のお医者さんを目指しました」だと聞こえがいいけれど、「儲かるから、動物のお医者さんを目指しました」だとどうでしょうか。動物のお医者さんという夢は一緒なのに、理由が違うと見方が変わりませんか?
 
今の子どもたちは、夢を叶えてキラキラと進む人の姿をメディアやSNSで多く目にしています。子どもたちに「必ず何か向いていることがある」とか「好きなことを仕事にしよう」と言い過ぎてはいないでしょうか。子どもたちが成長したときに、それが見つかる子もいる。でも、見つからない場合もある。その見つからない時に「それでもいいんだよ」と、大人が言ってあげられる優しい世の中であってほしい。
 
「無限の可能性がある」と言われますが、それはあくまでも「可能性」に過ぎないんです。僕は、人生の前半で1つ1つチャレンジして選択肢を減らしていき、最終的に残ったものを選んで「これやったらできるわ」ぐらいで生きていくのでもいいと思っています。
 
子どもだけではなく大人も、セカンドキャリアや夢を問われ続ける時代。「定年退職したらやりたいことがない」と思うと不安になる。でも、「夢を持つことが当たり前で、良いこと」という前提がなければ、この不安は生まれないんですよね。大きな目標がなくても、日々できることに集中する生き方だってある。「夢なんて持たなくていい」という考えも、広く共有されるような社会になるといいなと思います。

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