2026年8月16日放送

会場
さくら台幼稚園(富士市)
講師
いのちをバトンタッチする会代表 鈴木中人

プロフィール

1957年生まれ。1992年長女の小児がん発病を機に、小児がんの支援活動や「いのちの授業」等に取り組む。「いのちのバトンタッチ」をテーマに、いのちの輝き、家族の絆、生きる喜びなどを全国に発信している。

第 2495 回
いのちいっぱい 幸せいっぱい

私は愛知県に生まれ、妻・淳子との間に長女の景子、弟の康平を授かり、ごく普通の家族として暮らしていました。ところが、景子が3歳の時に小児がんを発症、3年間の闘病の末、6歳で天国へと旅立ちました。私はそれ以来20年以上、景子が教えてくれた大切なことを「いのちの授業」として伝え続けています。
 
【笑顔のこだま】
景子への最後の誕生日プレゼントは、ウエディングドレスでした。箱を開けると景子は大喜び。ドレスを着て、かつらをつけて、お化粧をしました。「かわいい!お父さん、写真を撮って!」と、最高の笑顔です。それから数ヶ月後、景子は天国へ旅立ちました。私はドレス姿の写真を見るたび、寂しい気持ちになりました。なぜか景子の顔が笑顔に見えないのです。
 
そんなある日、康平が夢の話をしてくれました。「空から階段がおりてきて、のぼったら上にお姉ちゃんいたよ。一緒にゲームやシャボン玉をやったよ。お姉ちゃん、笑顔いっぱいだった」。私は景子の写真に話しかけました。「泣いているより、笑っているお父さん、お母さんがいいよね」。
 
その夜、私は夢を見ました。草原にあるすべり台の上に景子がいます。名前を呼ぶと、景子は笑顔で振り返って言いました。「お父さん、わたしは大丈夫だからね」。目が覚めると涙が溢れました。その日から写真の景子は笑顔に見えるようになりました。
 
景子はつらい時も笑顔でした。それは周りの人が笑顔だったから。笑顔はこだまするんです。子どもたちは笑顔のお母さん、お父さんが一番好きです。自分から子どもたちに笑顔を届けてあげてください。
 
【こころの宝もの】
景子は絵本を作るのが大好きで、ある時ピクニックの絵本を作りました。「みんなでピクニックに行くの。お山のてっぺんに登ると、(弟の)こうちゃんはバンザイしてる。いつも元気だからね。そして、みんなでお弁当を食べる。それから公園で、こうちゃんとすべり台をするの」。私が「どうしてピクニックなの?」と聞くと、景子は「私の宝ものだから」と言いました。
 
私が小学校で「いのちの授業」をした時のことです。ある男の子に感想を聞こうとすると、泣き出してしまいました。先生が声をかけても、涙がとまりません。後日、小学校から感想文が届きました。その中のひとつに先生のメモが添えられています。「この子は授業で泣いてしまった子です。六年生ですが、ほとんど漢字を書けません。この子の気持ちを知って胸が熱くなりました」。ひらがなばかりの感想文にはこう書かれていました。
 
「おやこうこうしようとおもっても、ぼくは、なんのとりえもありません。なにかないかと、かんがえてみたら、とうさんかあさんよりも、はやくしなないようにします。だから、ぼくはがんばっていきていこうとおもいます」。
 
この子は心の中に大切な宝物を見つけてくれました。何を大切に思うかで生き方は決まります。その大切なことは命を見つめることで実感できると私は思います。

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