2024年11月24日放送

会場
テレビ静岡(静岡市)
講師
花まる学習会代表 高濱正伸

プロフィール

1959年熊本県生まれ。東京大学大学院修了。
93年、思考力などを重視した「花まる学習会」を設立。その後本格的な学習方法を伝授する「スクールFC」を設立。子どもの「生き抜く力」を育てることを重視した教育が好評。

第 2408 回
自分の心を見る

今の日本には、「自分が何をやりたいか」ということを見失いながら生きている大人があふれているように感じています。「ここじゃないどこか」に行きたい大人たち。「いいと言われて就職したけれど、なんか違う」という人に、「じゃあ何をしたいか?」と問うと、「特に何がしたいってわけじゃ...」と返ってくる。これがとっても多いらしいのです。

なぜそうなってしまうのか。社会の中には、幼稚園や小学校から大学、さらには就職するまでいろんな仕組みや評価基準があって、少なくとも中学校に行ったら「中間テストや期末テストの点数をちゃんと取らないと、いい高校にいけないぞ」という縛りでロックオンされます。抜けている人を見たことないぐらいです。もちろん恋に部活に楽しみもするのですが、この縛りはもう決定的で、その後、高校、大学、そして社会人になっても「この会社で出世するためには、こういう部署に行く人じゃないとね」とか「こういう評価基準があるよ」となるわけです。

制度とか社会は厳然といつの時代もあるもので、これが悪いわけじゃない。では何が問題かと言うと、「次はどれを取れば褒められるのかな」などと外側の評価基準のもとにばかり生きていて、「自分の心をいつも見て決める」ということを見失ってしまうことです。「心を見つめられる人になりましょう」ということを、特に次世代の子どもたちに伝えていきたいのです。

0歳から3歳ごろまでは周りの世界は関心事であふれていて、誰も自分を見失っていません。ところが、学齢が近づくにつれて、評価基準がテストになってきます。「学校でちゃんと褒められることがいいことだ」となり、親も親同士、子ども同士をいろんな人と比較したりします。無条件で愛されて全部遊びだった時代から急に評価基準が入ってきてくるのです。例えば「消しゴムのカス」やクワガタやカブトムシといった「虫」などに子どもが夢中になっていても、「ほかにやるべきことあるでしょう」「汚いからやめて」などと止めてしまうことが多いです。

もちろん基本的なしつけは大事ですが、親が面倒くさいから、嫌だからといって頭ごなしに止めないでほしい。親が「なんで?」と思うけれど、子どもが夢中だというものを大事にしてほしいのです。それぞれの時代を夢中にしてしまう、本当に自分の心を奪っているものを大事に生きていくということが、すごく大切だということです。好きなことを一生懸命やってたら、一番いい。もちろんそれは趣味でもいいんです。

自分の心を見つめるためには、日記を書くのがお勧めです。SNSに載せるものは外向きなので、なかなか本当のことは書けません。自分だけが見る日記には、自分の嫉妬心とかネガティブな気持ち、弱い気持ちなども、全部書き込んでください。「これが僕は好き」「これでいいんだ」と、自分の価値観を大事に、心を見失わずに生きていってほしいと思います。

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