2013年1月12日放送 樹原涼子さん(第1820回)
- 会場
- 御殿場市民会館
- 講師
- 音楽教育家 樹原涼子
講師紹介
熊本市生まれ。武蔵野音楽大学卒業。
1991年より順次出版されたメソッド「ピアノランド」がベスト&ロングセラーに。
作曲・執筆の傍ら、セミナーやコンサート、音大での特別講義などを通じ、
ピアノ教育界に新しい提案と実践を続けている。
第1820回「祈り」
人は親になると祈ることが多くなります。
子どもが小さいころもそうですが、少し大きくなると手が届きにくくなり、
ただ祈ることのほうが多くなります。
「祈る」という言葉からは、ご利益を願う感じが強いですが、
音楽を仕事にして、子どもを育てるようになってからは、
「祈り」は特別のものになりました。
何のために祈るかですが、子どもが学校に入ることとか、
お金がたくさん儲かるようにということではない「祈り」があります。
次男が高校受験の時一緒に合格発表を見に行った時、
私は息子がその学校に入れるようにと祈っていましたが、
彼は、どこに受かるかではなく、
自分の人生にとって一番いいところに入れるように祈っていると言うのです。
私は感動し、負けたと思いました。
もちろん勝ち負けではありませんが・・・。
そして、祈ることは深いものだと思いました。
それ以来、ピアノの生徒が受験を迎えるときに、
お母さんたちには、
「その子にとって一番いい結果が出るように」という話をしています。
小さいころ、私は転校生で、初めは新しい友達がたくさんできて嬉しかったのですが、
あるときから急に友達が私を無視するようになりました。
でも私は、「何てかわいそうな人たちだろう。
何が楽しいんだろう。本当にかわいそうな人たちだ」と思って、
その子たちのために「幸せになれるように」と祈りました。
私があまりショックを受けていなかったのでやがてそれはなくなりました。
卒業のとき皆から「ごめんね、私たちがバカだった」と言われて終わりましたが、
そのことで誰かのために祈ることが祈りの強さなのではないかと知りました。
自分が人として恥ずかしいことをしたりさせたりしていけない。
わが子がいじめられないようにと思うのではなく、
誰もいじめない社会になればいいと思います。
「祈り」という曲を書いて、自分の幸せのためだけでなく、
誰かが人のために祈れるように祈るという境地に立てたことが新しい気づきでした。