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過去の放送

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2013年6月22日放送 川村妙慶さん(第1843回)

会場
大富公民館(焼津市)
講師
僧侶・アナウンサー 川村妙慶

講師紹介

福岡県生まれ。真宗大谷派僧侶。
関西を中心にラジオ番組のパーソナリティーなどをつとめる。
ホームページで日替わり法話を毎日更新し、
メールでの悩み相談にも応じている。


ポイント第1843回「あなたは、かけがえのない存在」

私は、福岡県の門司で、寺の娘として生まれました。
高校2年の時に父が突然亡くなり、母や親せきは兄が後を継ぐべきだと言いましたが、
兄は、その願いに戸惑い、自分の部屋に引きこもってしまいました。

200人いた門徒の方たちは、ひとり、またひとりと去って行き、
ついにはゼロになってしまいました。
私もそれまで寺には全く関心がなかったのですが、
母が御先祖様に申し訳ない、京都に行って勉強してほしいというので、
花の女子大生もできる大学はないかと探して池坊短期大学に入りました。

そこで華道の先生に「華道は技術ではない、心が伴わないといけない、仏教も同じ」と言われ、
今までの自分の常識をひっくり返されました。
これを仏教では"回心(えしん)"と言います。

そうして、仏教の専門学校に進みました。
その学校ではいつも人に好かれようとニコニコと毎日を過ごしていましたが、
ある時、先生が私に「あんたはいつもそんなにニコニコしなくてはならないほど過去が暗いんか?」と言うのです。
私には意味がわかりませんでした。

そして、「ニコニコしているのは演じているだけ。人には背中に背負う荷物"業(ごう)"がある。
どうやって生きればいいのかという心をさらけ出せ」そして「娑婆に出ろ」と言いました。
私は放り出されたと思い、先生を恨みました。

やがて、ずっとあこがれていたアナウンサーの仕事をはじめたものの、
同期の人たちが東京に出て活躍するのを横目で見て、怒りや欲望で心が乱れました。
そしてそのとき、先生のことを思いだしました。
先生はあえて娑婆に出て泥の中で生きてみて、
その中できれいな蓮の花を咲かせてみろと言ったのです。

33歳の時、私は門司に帰り兄の部屋のドアをノックしました。
すると兄はすんなりと開けてくれ、
「僕もきっかけを待っていたんだと」言いました。
兄は何と小説を書いていました。

そのタイトルは『その後のウサギとカメ』。
人生をどう生きるかということをウサギとカメの関係になぞらえた物語でした。
カメは"業(ごう)"である背中の甲羅をしっかりと引き受けて、
恨むこともなく人生を歩み、その結果たまたま「勝った」のです。

その話を実家の寺で人形劇として行ったりするうち、自信がついたのでしょう。
そのあと、兄は京都で勉強して僧侶となり、今は実家の寺を守ってくれています。

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