2017年11月19日放送 鈴木光司さん(第2057回)
- 会場
- 常葉大学(静岡市)
- 講師
- 作家 鈴木光司
講師紹介
1957年静岡県生まれ。
慶応義塾大学文学部仏文科卒業。
1990年『楽園』が日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞。
『リング』のシリーズが計800万部のベストセラーとなる。
2013年『エッジ』でシャーリー・ジャクスン賞長編賞受賞。
番組で紹介した本
『野人力 オヤジが娘に伝える「生きる原理」』 著:鈴木光司・鈴木美里(小学館)第2057回「野人のすすめ」
私は自分の事を「元祖イクメン」だと言っています。
小学生の頃の私の夢は、小説家になる事と、
転校してきた女の子と結婚する事の二つでした。
その夢はどちらも叶いました。
結婚して二年後に長女、そして四年後に次女が産まれました。
その頃、妻は高校教師、私はまだ売れない小説家。
フルタイムで働く妻に代わり、家事は私がこなしました。
当然、二人の娘の子育ても私がやりました。
そのお蔭で娘たちは私に懐きました。
二年前、二人の娘が結婚する時、私は結婚式の司会に立候補しました。
なぜなら娘の成長過程でのエピソードを全て知っているからです。
我が家のエピソードと言えば、まだ二人が小さい頃、
長女が「プライベートビーチに行きたい!」と言いました。
「プライベートビーチか・・・金がかかるな・・・。」
まだ貧乏のどん底だった私は考えました。
「プライベートビーチ」とは誰もいない海で泳ぐ事だと気付いたのです。
その頃、子どもたちの学校は第二土曜日と第四土曜日が休みでした。
私は6月の第二土曜日に伊豆の民宿を予約して出かけました。
そして誰もいない海で家族全員泳ぎました。
民宿の人は東京から変わった客が来たと近所に電話したようですが、
私たち家族は人のやらない事をやったお陰で
渋滞にも巻き込まれないし安上がりだし良い事ずくめです。
それから十年間くらいプライベートビーチ旅行を続けました。
人と同じ事をやっていては駄目。頭を使って行動する事が大事なのです。
この様な行動をする私は「野人」だとよく言われます。
「野人」とは 「いついかなる時でも自己コントロール能力を失わない事」
だと私は思っています。
「自己コントロール能力を失う」とは、わかりやすく言えば
昔からよく言われている「飲む、打つ、買う」という事に溺れる状態です。
その時、自己をコントロールする能力は働いていません。
例えば私はカーナビを使います。
しかしそれは自分がいる位置を確認するためだけにしか使いません。
つまり機械に支配されないようにしています。
機械に支配されるという事は自己コントロール能力を失う事です。
これから人工知能が発達し、車も自動運転になっていくでしょう。
それはそれでいい事です。
しかし最終的には自分で判断し、決定は人間がする。
これが大事な事であり、私の思う「野人力」につながるのです。