2018年8月 5日放送 ダニエル・カールさん(第2092回)
- 会場
- 聖隷クリストファー中・高等学校(浜松市)
- 講師
- 山形弁研究家・タレント ダニエル・カール
講師紹介
1960年アメリカ生まれ。高校時代、奈良に1年間留学。
大学時代にも来日し、大阪・京都・佐渡島で過ごす。
大学卒業後、山形県に文部省(当時)英語指導主事助手
として3年間赴任し、山形弁をマスターする。
第2092回「考えすぎない英語勉強法」
今から三十五年以上前、私は英語指導主事助手として山形県に赴任しました。
現在では全国で五千人以上もの外国人の先生がいますが、当時は七十人ほどでした。
山形県に赴任したのは私一人。
当時、山形県内には二百校以上の中学と高校がありましたが、
これら全てを私一人で担当しなければならなかったのです。
およそ一年かけて毎日違う学校に訪問しました。
どの学校に行っても毎朝の始まりは同じ光景でした。
なぜなら「外国人の先生」というだけで当時は非常に珍しかったからです。
校庭を歩いていると、大勢の生徒が教室の窓から私を見て騒ぎ始めます。
そして必ず誰か一人が私に近づいてきて決まり文句を言うのです。
「This is a pen.」これが私への挨拶でした。
当時の英語の教科書に載っていた定番の英文です。
当時の日本の英語教育は文法を重視していました。
受験対策中心のためなのか、完璧主義のように思えたものです。
私は「もっとフランクに考えて英語を話した方が良い」と思い、
いつも授業の終わりの十分位は生徒と自由に英語で質疑応答する時間にしていました。
子どもたちが聞いてくる質問は大体同じでした。
「何歳ですか?」「彼女はいますか?」といった内容が主です。
そんな中、面白い事がありました。
ある生徒が「猫は好きですか?」と聞いてきました。
私はイエス・ノーで簡単に答えるのではなく、
「好きだけど、君はどうですか?」と聞き返しました。
するとその子は困った顔をするのです。
「なぜ答えに悩んでいるの?」と尋ねると
「猫は好きでも嫌いでもないから、英語でどう言えば良いのかわからない・・・」
と真面目に答えたのです。
質問には完璧に答えないといけないという考えがあったようです。
そこで私はとっておきの英語を教えてあげました。
それは「So-so.」です。
日本語の「まあまあ」などと同じで、曖昧な返事になります。
「イエス」でも「ノー」でもない使い勝手の良い英語です。
でも日本の英語の教科書には出てきません。
答えをはっきりさせる完璧主義に囚われず、
楽しく考えすぎないで英語を学んでもらえればと思います。