2011年4月16日放送 相田一人さん(第1733回)
- 会場
- 三島市生涯学習センター
- 講師
- 相田みつを美術館館長 相田一人
講師紹介
1955年栃木県生まれ。相田みつをの長男。1996年から相田みつを美術館の館長を務める。全国各地での講演活動や執筆活動などを行う。2024年、相田みつを生誕100年を迎えた。
第1733回「ある日自分へ」
相田みつを美術館には、全国から老若男女多くの人が訪ねてきます。
先日、18歳という女子学生が私に声を掛けてきました。
「両親を尊敬しているが、色々言われるとつい反発してしまう。
でも、ここで相田みつをさんの作品にふれると、
なるほどなと思う」と話してくれました。
この事は、父の作品の特徴であり、秘密だと思います。
「ある日自分へ」という作品があります。
『おまえさんな
いま一体何が一番欲しい
あれもこれもじゃだめだよ
いのちがけでほしいものを
ただ一ツに的を
しぼって言ってみな』
厳しくもあり、ユーモアもある作品ですが、
「ある日自分へ」という言葉は、父のすべての作品の
サブタイトルとしてつけてもいいと私は考えています。
父の有名な作品
『つまづいたっていいじゃないか にんげんだもの』
『しあわせはいつもじぶんのこころがきめる』
これらの作品の前に、「ある日自分へ」という言葉をつけても、
違和感はないと思います。
父は作品を書く以上、見て下さる皆さんに向けて
書いているのは間違いありませんが、
実は、自分に向けても書いていると私は考えています。
相田みつをが、相田みつをに問いかけているのです。
自分に向けて、言葉を書くという事は、自分の心を覗き込まなくては書けません。
自分と対話すると、いい事ばかりが見えてくるとは限りません。
人に見せたくない、知られたくない、恥ずかしくて、嫌な面は
だれにもたくさんあります。
それを隠してしまうと、本当の意味で自分に向けての言葉は書けないと思います。