2019年1月13日放送 竹下和男さん(第2112回)
- 会場
- 新原小学校(浜松市)
- 講師
- 子どもが作る“弁当の日”提唱者 竹下和男
講師紹介
1949香川県生まれ。香川大学教育学部卒業。
香川県・滝宮小学校の校長在職中、2001年に
子どもひとりで作らせる"弁当の日"を始める。
実践校は全国2400校以上に広がっている。
番組で紹介した本
「泣きみそ校長と弁当の日」 著:竹下和男・渡邊美穂(西日本新聞社)第2112回「負うた子に教えられ」
今、日本各地で子ども食堂が広まっています。
私は全国各地を講演で訪れるので子ども食堂の実態を見る機会がありますが、
どこも同じような問題が出てきています。
「無料で食べさせてくれるから今日はあそこに食べに行こう。」
という感じで来る家族連れもいるようです。
しかし、子ども食堂ができた本来の目的はそうではありませんでした。
親にほったらかしにされて夕飯が食べられないから、
あるいは一人きりで食べるのは寂しいから
「たくさんの子どもと一緒に楽しく夕飯を食べさせてあげよう!」
という発想で子ども食堂は始まりました。
善意の固まりのようなおばちゃんたちが自分の所で作った
出荷できない不揃いの野菜やお米を持ち寄って料理をふるまったのです。
それが全国にあっという間に広まりました。
あっという間に広まったという事は、そういう境遇の子どもたちが多いという事です。
そんな子ども食堂が本来の目的とは違ってきた事に運営している人たちは嘆いているのです。
人は置かれた環境に適応します。
作らなくても食べられるという事を繰り返していると、
結果的に「あそこに行けば何もしないでご飯が食べられる。」という考え方の子どもになってしまいます。
「いずれは自分でご飯を作れる子どもにしてあげよう。」というスタンスで
この食堂を運営しているのだと伝える事が大切なのです。
私の話を聞いたおばちゃんたちは相談してチラシを作りました。
それは料理が全くできない子どもだけを集めて料理教室をするというものでした。
そのチラシを見た小学校1年生から6年生まで合計15名が集まりました。
既に出来上がったものを食べさせるという今までのやり方とは違い、
お米を研ぐところから教えたそうです。
子どもたちの手つきを見ておばちゃんたちはびっくりしました。
この子たちは家で何も教えてもらってないという事が分かったのです。
そして野菜を刻ませて簡単な漬物にし、炊いたご飯でおにぎりを作らせたのです。
皆、一生懸命作りました。
出来上がったおにぎりを目の前にして、「さあいただきましょう。」と声をかけました。
ところが、15人の子どもたちは誰一人としておにぎりを食べようとしません。
何故だかわかりますか?
ここに自分で料理を作る事の大切さが隠されているのです。