2020年10月 4日放送 加藤英明さん(第2199回)
- 会場
- テレビ静岡(静岡市)
- 講師
- 静岡大学 教育学部 准教授 加藤英明
講師紹介
1979年静岡県生まれ。農学博士。
世界中のジャングルや砂漠を駆けめぐる生物ハンター。
カメやトカゲの保全生態学的研究をしながら、
学校や地域社会で環境教育活動を行っている。
番組で紹介した本
「私の家、すごいんです。いきものやばいすみか図鑑」監修:加藤英明(西東社)第2199回「子育て上手な生き物たち」
きょうは生き物の「すみか」をテーマにお話します。
身を守り安心して休むことができる場所、そして命をはぐくむ場所、それが「すみか」です。
ハタオリドリという鳥は機を織るように葉を編み込んで巣をつくります。
一般的な鳥の巣は親が飛んできて着地できるようにお椀型をしていますが、
ハタオリドリの巣は下に入口があって中がU字状にカーブしています。
外から卵が見えないようになっていて、
例え敵が木をつたってきても中には入れない構造になっています。
私がこの巣を見たのはアフリカです。
オオトカゲなど天敵が多くいる弱肉強食の環境で生き残るため、様々な工夫が施されてます。
巣をつくらずに子育てをする生き物もいます。
日本の図鑑で「子守りガエル」と呼ばれるカエル「ピパピパ」は子育てがとてもユニークです。
メスは卵を産んだ後、孵化してオタマジャクシになり、
そしてカエルに成長するまでの約80日間、自分の背中に子どもを背負って守ります。
卵は背中の皮膚に覆われて見えなくなり、
お母さんが安全な場所に隠れれば子どもたちも守ることができます。
意外に子育て上手な生き物はワニです。
母親のワニは巣を作り、卵がかえるまでつきっきりで守ります。
そして卵が孵化してからも1年ほど子育てをします。
ワニは社会性がありコミュニケーションをとることができます。
子ワニが鳴き声を上げると親や兄弟が集まって守るのです。
みんなで子育てをします。
ワニがこのような社会性を持っていることはあまり知られていません。
子どもにとって危険を避けられる場所がある、
そして「自分を守ってもらえる大きな存在=親」が近くにいることで安心して育つことができます。
子育てが下手な生き物は基本的にいません。
ただ、子育て上手なワニをみても若いうちは子育てがうまくいかないことがあります。
すべての生き物は少しずつ経験を積んで子育てが上手にできるようになっていきます。
はじめから子育てがうまくいく生き物はいないと思います。