2020年10月25日放送 樋口恵子さん(第2202回)
- 会場
- テレビ静岡(静岡市)
- 講師
- 評論家 樋口恵子
講師紹介
1932年生まれ。東京大学文学部卒業。
時事通信社などを経て評論家に。
婦人・福祉・教育の分野で幅広く活躍。
「高齢社会をよくする女性の会」理事長。
第2202回「温故知新 語り継ぐ言葉と想い ~家族のかたち~」
【サザエさんちの子どもたち】
サザエさんは戦後の日本を描いた新聞連載マンガが始まりです。
私は好きな男性を3人あげると必ず「カツオくん」が入ります。
おつかい、お掃除、子守り。カツオくんくらいお手伝いをする子はいないと思います。
タラちゃんをおんぶしている姿、そして回覧板より早く隣り近所に情報を伝える行動力。
育児に参加しながら地域社会の一員としての役割を十分に果たしています。
サザエさんは一見、古典的に見えますが実は今の時代にも通用するメッセージが込められています。
だからこそみんなに愛されるのだと思います。
連載が始まった頃のカツオくんは、遊びとお手伝い、そして勉強のバランスがとれていました。
しかし昭和45年を過ぎたころから遊びがだんだん少なくなってきます。
かつては地域の「面」の中でいろいろな人に出会ってきましたが、
いつの間にか学校と自宅の「直線距離」の中に閉ざされてしまいました。
遊びの中で子どもは人と出会い、物と出会い、その中で知恵も工夫も人間関係も、
そして嫌なこともつらいことも楽しいことも学んできました。
地域の中で自由な遊びができる場をどう確保していくか?
いまの大人の力量が問われているような気がします。
【祖母力】
「むかしむかし、あるところにおじいさんとおばあさんがいました。」
昔話は、みんなおじいさん、おばあさんが主役でした。
そしてまた昔話を読み聞かせるのもおじいさん、おばあさんでした。
私にはひとり娘がいます。
この子が無事に育ったのは、私の母がある意味、
自分を犠牲にして献身的に孫育てをしてくれたおかげです。
いま現役で孫を育てているおばあさん20人を知り合いから辿って調べてみました。
するとそのうち6割が働いていました。
そしておばあさんたちは朗らかに「孫育ては楽しいです。」と声をそろえます。
さらに「これも保育所のおかげです」と。
保育所はいま、高齢者の持っている専門性を社会的資源として共有する場にもなっています。
例えば染め物をしているおばあさんがお母さんや子どもたちに染色を教えたり、
虫博士みたいなおじいさんが虫取りを指導したりしています。
地域の中で子育てを支援したり、情報交換したりする場所は大切です。
そこで祖父母世代が貢献しています。
世代を超えて祖父母力を発揮できる、そんな関係を是非構築して頂きたいと思います。