2020年11月29日放送 竹下和男さん(第2207回)
- 会場
- テレビ静岡(静岡市)
- 講師
- 子どもが作る“弁当の日”提唱者 竹下和男
講師紹介
1949香川県生まれ。香川大学教育学部卒業。
香川県・滝宮小学校の校長在職中、2001年に
子どもひとりで作らせる"弁当の日"を始める。
実践校は全国2400校以上に広がっている。
番組で紹介した本
ドキュメンタリー映画「弁当の日」監督:安武信吾第2207回「子育てと子守り」
桜にバラの肥料を与えてもバラの花は咲きません。
植物は私たちの子育てがどうあるべきかというメッセージを与えてくれています。
いまの子育ては干渉しすぎているのかもしれません。
子どもがやるべきことを親が取捨選択して、効率よく高い峰に登らせようとしています。
しかし子どもは生まれ持った力で自ら成長します。
それをサポートするのが「子守り」です。
芽生えてくるタイミングで必要な栄養を与えたり、
挑戦させたりすることで子どもも桜も大きく育ちます。
私は社会科の教師です。
民俗学にも興味があって「なまはげ」について研究しました。
なぜこの行事が江戸時代から二百数十年もの間続いてきたのか、
それは地域の教育力です。
なまはげは子どもの日常生活には存在しない生き物が突然やってきます。
「この家に親のいうことを聞かない子はおらんか?」
子どもにとっては突然でも、家族はみんな準備万端整っているのです。
お母さんや兄弟は隠れています。お父さんは居間で正座しています。
逃げ惑った子どもはお父さんを見つけてしがみつきます。
そして、なまはげはまた「この子は親の言うことを聞くのか?」と尋ねます。
続いてお父さんが「おまえはお父さんの言うことを聞くよな?」と念を押します。
いってみれば約束ごとです。
子どもが大きくなった時に全てに気づきます。
そして、それが「地域全体で自分を見守り、育ててくれている」
という感覚につながっていきます。
私が、子どもが作る「弁当の日」を始めてから20年が経ちました。
最初は子どもを台所に立たせることが難しい状況でしたが、
学校として「弁当の日」に取り組むことになると状況はガラッと変わりました。
みんなで一緒に取り組み、子ども同士が弁当を見せ合って成長していきました。
そしていま「弁当の日」に取り組んだ子どもたちが
自分の子どもを台所に立たせて育てています。
子育てが楽しいという感覚は、こうした時間を過ごすことによって未来につながります。
学校や地域の大人たちが責任を持って子どもを見守るという意識は、
「弁当の日」も「なまはげ」も基本的には同じだと思います。
そしてそれが大人の役目なのだと思います。