2021年1月10日放送 鎌田實さん(第2212回)
- 会場
- 丸森まちづくりセンター(宮城県丸森町)
- 講師
- 医師・作家 鎌田實
講師紹介
1948年東京生まれ。東京医科歯科大学医学部卒業。
諏訪中央病院名誉院長。地域医療に携わる傍ら、
イラクや東日本の被災地支援にも取り組む。
「がんばらない」、「大・大往生」など著書多数。
番組で紹介した本
「コロナ時代を生きるヒント」著:鎌田實(潮出版社)第2212回「今を生きるヒント」
2019年10月の台風19号により、
宮城県丸森町は河川の氾濫や土砂崩れなど大きな被害を受けました。
そして2021年は東日本大震災から10年を迎えます。
今回は、国内外で被災地支援を続けている鎌田實さんを講師に迎え、
丸森町の会場からお送りします。
― ― ― ― ― ― ―
新型コロナの時代になり死がより身近に迫りました。
各地で災害が起き一歩間違えれば命を失う危険が増しています。
こうした困難な時代を生きるヒントとして僕には守り続けたいことがあります。
まずひとつは『自分の命・生き方は自分で決めること』。
最後まで自分らしく生きることを我々日本人は苦手としてきたような気がします。
しかし、これがいまとても大事だと思っています。
そしてもうひとつは『誰かのために手を差し伸べること』。
誰かのために一生懸命になっている人は最後まで明るく過ごせます。
末期がんの女性が東京の病院に入院していました。
彼女は僕のラジオを聞いて諏訪中央病院の緩和ケア病棟に転院して来ました。
病院には全国から若い研修医や医学部の学生たちが来ています。
そのことに気づいた彼女は
「私が東京の病院で受けた医療と、この病院で受けている医療の違いを話してもいいですよ。」
「末期がんの告知を受けた人の気持ちを医者の卵のみなさんに教えます。」
と提案してくれました。
ありがたいと思いました。医学生や研修医にはかけがえのない勉強の場になります。
そしてある時、気づきました。彼女が日に日に活き活きとしてきたのです。
血液のデータは時とともに悪化しているにもかかわらずです。
「自分には近々死が訪れる。
だけど自分が医学生や研修医たちに命の大切さを話すことによって
患者の身になってくれる温かな医者が少しでも増えたら...
これから癌になる人たちの救いになる。」
自分が存在する意味が彼女には見えてきたのです。
彼女の人生は最後まで格好良く、見事でした。
コロナ時代、こんな時代だからこそ、
ぎすぎすして相手を批判したり、後ろ指をさし合ったりするのではなく、
誰もが温かく生きていくこと、自分の命・生き方は自分で決めること、
そしてほんの少しでも誰かに手を差し伸べること。
その中で生きる意味が見えてくることを彼女から教わりました。